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フナ11【フナ飯】岡山旅行の前に読む・干拓の歴史(児島)

フナ飯という岡山の郷土料理をご存じでしょうか?

フナ飯はフナを骨ごとミンチにして、野菜とダシで煮込み、それをご飯にかける料理です。岡山県の日本一大きい人工湖児島湖でとれたゲンゴロウブナやギンブナがよく使われます。

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  魚料理 磯さんのフナ飯 (引用; 岡山県HP)

岡山県のフナは日本一

毎日の生活の中で、フナのニュースが話題に上がる事は皆無ですが、実は、平成13年以降、岡山県はフナの漁獲量1位を守り続けています。その漁獲量は飛びぬけており、全国の45%は岡山のフナで占められています(2位の青森ではその1/4)。

なぜ岡山なのか?

理由は2つ考えられます。

まず、岡山は「晴れの国」と言われ、降水量が少ない事が知られています。そのため農業用水にはため池を使う事が多く、そのため池にフナが多く生息している事が考えられます。次に江戸時代以降に行われた干拓のために、農業用の用水路が多い事も原因だと考えられます。なんと岡山平野の80%は干拓で生まれたと言われていますので、かなり大規模な干拓工事です。先程のフナの捕れる児島湖干拓で生まれました。

干拓とは

干拓とは埋め立てと異なり、干潟をせき止めて海水の流入を防ぎ、土地を淡水化する作業です。岡山県では、平安時代から極小規模に開始され、江戸から昭和にかけて大規模に実施されました。

1300年前は倉敷も児島も島だった

それでは、時代をさかのぼって干拓された部分を1300年前の地図で確認してみましょう

下の地図では、現在の地図の上に、当時の陸地を緑色にして示したものです。

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     参考;八濱漂泊傳作成 吉備子洲 古地図

海岸線は現在の岡山市中心地の北側まであり、倉敷や児島は完全な島になっています。

現在の、観光客でにぎわう倉敷美観地区の面影はありません。

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   現在の倉敷美観地区

この時代は児島以北に20の島々が点在し、島々の間は遠浅の干潟が広がっていました。倉敷は8~9世紀ごろには干潟で陸続きになったと言われていますが、早島は、江戸時代までは島でした。

江戸時代以降の大規模な干拓

江戸時代になると干潟を水田に変えるための干拓が進み、倉敷・早島間も陸続きとなり、一つの半島になりました。

また、明治から昭和にかけて、その半島の東側が干拓され、現在の児島湾と児島湖が出来上がりました。つまり約400年で現在の岡山県南部が出来上がったということです。 

恩恵と弊害

干拓の恩恵は、もちろん利用可能な陸地ができた事です。現在の岡山はこれなしでは語る事ができません。下は現在の岡山市から児島にかけての航空写真ですが、平地はすべて干拓地です。

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しかし、弊害もありました。潮の流れが悪くなり、海底にヘドロが堆積して、海底に住む甲殻類やそれを食べる魚が激減したことです。昭和40年以降はかなり問題となり、環境対策も制定されました。

特に児島湾は幻のウナギと言われる「青ウナギ」の産地として有名ですから、今後も環境への対策が何かと注目されると思われます。我々も環境問題を考えるのが当たり前の時代になった事を自覚しなければなりません。

 

皆様も岡山・倉敷にご旅行の際には、「フナ飯」を食べて、児島の干拓の歴史に触れて、自然環境の事を考えてみてはいかがでしょうか?

「ふなめし」は、岡山市内の飲食店10店舗で食べることができます

児島湖のふなめし - 岡山県ホームページ(備前県民局地域政策部)

児島周辺の観光地

初級編:児島ジーンズストリート

TVでもよく称されている日本ジーンズの発祥の町で、こだわりの一本を見つけるのはいかがでしょうか?街並みも良いので散歩も良いです。

中級編:京橋クルーズ

瀬戸内国際芸術祭の開催期間には、岡山市内から、児島湾を経て犬島(犬島精錬所美術館)に行けます。瀬戸内らしい島時間とスケールの違う美術館を楽しめます。同様に児島湾の南にある宇野港から直島(地中美術館)や豊島(豊島美術館)に行くのもお勧めです。

上級編;二条大麦の麦畑

児島湖周辺をめぐるサイクリングがおすすめです。時期は梅雨前までが見頃で、ドローンをお持ちなら、なお良しです。シンプルに干拓の恩恵を堪能できます。

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   児島湖西岸の麦畑(引用; 岡山観光WEB)

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まとめ

岡山県のフナ飯を支えるのは、漁獲量日本一という実績

・今の岡山平野は干拓によって出来上がった

 

参考

https://www.pref.okayama.jp/page/354445.html

https://ieben.net/data/catch/inland-catch/japan-tdfk/funa.html

https://www.maff.go.jp/chushi/seibibu/shigen/1_8.html

https://blog.goo.ne.jp/sholly/e/1970bcc4396149b62ace48c09562ffdc

https://www.okayama-kanko.jp/spot/10196

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