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フナ06【鮒を食べる文化】鮒ずしから見る寿司文化の旅

皆さんの中で「鮒の代表的な料理」とは何でしょうか?

多くのヒトが「鮒ずし…かな?…食べたことないけどね…」と答えるのではないでしょうか?

確かに「鮒ずし」はTVなどで紹介されたりしていますが、「これのどこが寿司なんだ?」という風貌をしています。

それでは、この「鮒ずし」とは、一体どんなお寿司なんでしょうか?

見ていきましょう。

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寿司だけど、ご飯がない「熟れずし(なれずし)」

上の写真のように、鮒ずしには、寿司という割にはご飯が見当たりません。このタイプのお寿司は「熟れずし」と呼ばれます。寿司というよりも、漬物に近い食べ物です。

つまり、「ぬかずけ」ではぬか床に野菜を入れて発酵させますが、熟れずしである「鮒ずし」では、ご飯に鮒を入れて発酵させているという共通点があります。

食べる際も、「ぬかずけ」では野菜からぬかを洗い流しますが、「鮒ずし」でも同様に、使用したご飯を洗い流して食べます。ご飯を洗い流す理由は、ご飯が食べられらない程、酸味が強いからです。

鮒ずしの発酵期間は年単位ですから、ご飯の発酵が進みすぎているのです。

周りのご飯を洗い流して、鮒をスライスにした状態が上の写真の状態となります。

 味は?

さて、もっとも重要な「味」なのですが、鮒自体もかなりの酸味を帯びています。

そして、発酵食品であるために、独特の香りがします。

くさやや納豆のように好き嫌いが分かれる食品です。

 

一見、不思議な「お寿司」でしたが、「鮒ずし」は一種の漬物だと言われれば納得です。

それでは、この漬物のような「熟れずし」が、どのように現在のお寿司になったのでしょうか? 見ていきましょう。

握りずしへの進化

ご飯も楽しむ寿司へ

奈良時代に「熟れずし」として生まれた鮒ずしですが、その後、鎌倉時代になると、漬け込む時間を年単位から月単位へと短くして、発酵を抑え、ご飯も食べる「生成(なまなれ)」が生まれました。

これが現在の寿司の原型か否かに関しては議論があるところなのですが、「寿司は、魚だけでなく、ご飯も楽しむ」という習慣が生まれた事は大切なポイントだと思われます。

 寿司の原型

同じく、この時代には「ご飯も楽しむ寿司」という趣旨で、樽の中にご飯と魚を入れて圧力をかけて寿司をつくるという、樽寿司の原型(奈良県のアユずしなど)が出来上がりました。

熟成の期間は2~3日だったと言われています。

このあたりから、現代の寿司をイメージできる寿司の形になってきていると思います。ちなみに、現在の寿司の日(11月1日)は、このアユずしと関連があると言われています(記事の最後に紹介)。 

そして江戸時代

さらに江戸時代になりますと、漬け込む時間を短くするためにご飯にお酢を混ぜて、箱ずしや押しずしが出来上がりました。

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その後、

最終的に漬け込むことなく、酢飯に魚を乗せて握るだけの握りずしになったというわけです。

これも江戸時代の話です。

 

つまりお寿司は、冷蔵庫の無い時代にどうやって魚を保存して、おいしく食べるかという工夫の中から生まれた料理だったことが分かります。 

このような話をしますと、すべてのお寿司を食べ比べてみたくなります。

注目のお店

それではここで、今回の記事で紹介しましたお寿司が食べれるお店で、今後、行ってみたいと思うお店を紹介したいと思います

Restaurant Kabi(東京都)

北欧のレストランで修業したジェフが、保存食文化に着目した創作料理とワインのお店です。発酵・成熟食品が持つ旨味と酸味にフォーカスされているとの事で、「鮒ずしのおじや」が紹介されていました。

しかし、名前が「Kabi」というのはすごくインパクトがあり、興味を駆り立てます。

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  引用:食べログ shimoyama01さんの写真

様々な食材を発酵させることで香りや味わいにバリエーションを出している

新しい味覚の連続。目黒【kabi】は次なる時代を予感させるレストランだった │ ヒトサラマガジン

所在地: 〒153-0063 東京都目黒区目黒4丁目10-8

 HP: https://kabi.tokyo/

つるべすし 弥助(奈良県

千本桜で有名な奈良県の吉野にあるお寿司屋さんです。

現存する日本最古のお寿司屋さんとしても有名で、寿司の日(11月1日)の由来となっているお寿司屋さんです。

記事にありました現在のお寿司の原型である「アユずし」が食べられます。

創業800年という建築物としても価値があります。

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  引用: 食べログ アルボスさんの写真

谷崎潤一郎村上春樹などのさまざまな著名人も訪れました。

天然鮎の懐石料理を、800年前に創業した現存最古の鮨屋でいただく│観光・旅行ガイド - ぐるたび

所在地: 〒638-0041 奈良県吉野郡下市町大字下市533

 解説:寿司の日

 現在、11月1日は寿司の日とされています。

これは、歌舞伎18番の「義経千本桜」の」「鮨屋の段」という作品に由来しています。

主役の平維盛(たいらのこれもり)は平清盛の孫で、平家の大将を務めていました。しかし、800年前の源平合戦の後に、彼は討伐から逃れるために現在の奈良県吉野で鮨屋に、「弥助」という名前で弟子入りをします。

「弥助」は、奈良県吉野の吉野川でとれたアユを鮨にする寿司職人としての生活をしばらく送っていましたが、やがて、その鮨屋の娘と恋仲になり、最終的に結ばれて、養子に入りました。その日が11月1日だとされています。

つまり、上で紹介した「つるべずし 弥助」が寿司の日の由来という事です。

 

最後に、皆さんも歴史を学び寿司を知る旅に出てはいかがでしょうか?

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まとめ

・鮒ずしは、漬物のような発酵食品で、お寿司の原型だと考えれる

・その後、ご飯も楽しむための試みから、新しいタイプの寿司(生成)ができた

・現在の寿司の原型

 

参考

https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience/50/1/50_35/_pdf

いまの日本の基礎を作った! 知られざる江戸時代中期 200年の秘密、 島崎晋

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