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フナ10【版画家・大野麦風】鮒から始める姫路の旅

以前、ブログの中で、長嶋祐成さんの「きりみ」という絵本を紹介した事があります。リアルなのに優しい魚のイラストが非常に印象的です。また長嶋さんは京都水族館の魚を紹介するイラストも手掛けられていますので、水族館に行けば、いろいろな種類の魚とイラストと見比べるという楽しみ方も可能です。

他にも気になっている画家さんが何人かいるのですが、今回の記事では、その中で「大野麦風」さんにフォーカスして、紹介したいと思います。

大野麦風

大野麦風さんは兵庫県にお住まいだった明治~昭和の版画家です。以前、姫路城を見に行った際に、姫路公園内の姫路市立美術館で版画を拝見しました。

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 引用:大野麦風《フナ》

背側から腹側にかけてのウロコのグラデーションに何とも言えない美しさがあります。これが版画だと言うのですから驚きの技術です。

日本初の魚類生態図

そして、彼の最大の作品と言われるのは、昭和13年に出版された「大日本魚類画集」です。これは、全72点からなる画集で、日本で最初の魚類生態図と評されています。この本は単なる魚図鑑ではなく生態図鑑となっており、魚の版画に加えて、魚類学者の解説がセットになっているのが特徴です。

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 引用:大野麦風《イラ》大日本語類画集1942年

大野麦風は、この本を書くために、和歌山県沖合で潜水艦にまで乗って魚を観察していたとの事ですから驚きの執念です。その時のことを彼は下のように語っています。

(魚の)一種の鋭さ、いわゆる、真剣さと言ったものは、はっきりとその表情の上に見て取ることが出来る。この真剣さが即ち生態の真実であり、その真実を究め得てこそ真の生態書と言える」

大野麥風「魚類畫集について」1938年『聯盟』第三輯5月号

彼が単に魚を描きたかったのではなく、生態図鑑を作成したかった事が伝わってくる言葉です。確かに「イラ」の絵からにはダイナミックな迫力が伝わってきます。

 

皆さんも折を見つけ、大野麦風の作品を鑑賞してみてください

姫路市立美術館は「大日本魚類画集」の全72点を所蔵されているという事ですので、そのうち大野麦風展が開催されるのではないでしょうか。

姫路市立美術館周辺の観光地

● 姫路城:当然、観光客が多いですが、そんなときは姫路公園でも十分に雰囲気を楽しめます。近傍に駐車場が多いのがうれしいです。

書写山圓教寺:映画「ラストサムライ」や、将棋を題材にした「3月のライオン」のロケ地に使われた寺院で、個人的には姫路城よりもお勧めです。自転車を借りれば姫路城から30分ぐらいで到着しますし、小学生ぐらいの子供も飽きません。

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  書写山圓教寺

Internet Museum

今すぐ「大野麦風」に触れたいヒトは」、Internet Museumをどうぞ。

2013年に東京ステーションギャラリーで開催された『大野麦風展「大日本魚類画集」と博物画にみる魚たち』の展示の様子や、大野麦風から摺師への見本書は公式Youtube [Internet Museum]で見る事をできます。

展示の様子


『大日本魚類画集』 東京ステーションギャラリー 大野麥風展

 

大野麦風の摺り見本(版画家から摺師への指示書)


『大日本魚類画集』《イサギ》摺り見本 東京ステーションギャラリー 大野麥風展

 

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