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フナ08【鮒を食べる文化】長野旅行の前に読む・時代先取りの水田養殖

私の住んでいる徳島県では、田んぼの中で小さなフナが泳いでいるのを時折目にすることがあります。用水路からフナが紛れ込んで、田んぼで大きくなったのでしょう。

ところが積極的に田んぼでフナを飼っている地域があります。

長野県です。

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それではまず、その歴史に関してみてみましょう。

年貢免除のコイ養殖

長野県佐久市では、江戸時代から食用としてコイの養殖が農家の副業として開始されました。当時は「年貢」の対象外とされたため、農家への普及に拍車がかかったようです。

ため池を使用した養殖だけでなく、自家消費用として、水田での養殖も始まったのも江戸時代です。そのうちにコイほどに手のかからないヒブナの養殖もスタートしました。

つまりこの時代の養殖のメインはコイで、フナは副産物という立場でした

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 明治時代のコイの養殖業 引用; 地域研究年報, 37(2015)129–157

その後、昭和になりますと、コメの生産率を求め化学肥料を多く使い始めたために水田での養殖は下火になります。

減反政策でフナの水田養殖が普及

水田でのフナの養殖が本格的になったのは昭和40年代です。意外に最近なのでちょっと驚きます。

当時の日本では減反政策(コメの余剰対策として水田を減らす政策)が開始されていました。各農家は、コメに代わる作物を作る事を求められましたので、そこで、水田を利用したフナ養殖が盛んになったという事です。

では、「年貢制度」も「減反政策」も終了した現在、このフナ養殖はどうなっているのでしょうか? 

2万匹の親ブナの配布

2019年のニュースでは、JA佐久が養殖農家に約1トンの産卵用の親ブナを配布したと報道されています。親ブナの体重は55gですので、約2万匹です。

この親ブナは5月から6月にかけて産卵し、生まれた稚魚を約3か月飼育して出荷されます。

フナ祭り、数に限りがあります

販売は決められた日に行われます。9月中旬の「フナ祭り」です。「佐久生小鮒」として、ビニール袋に酸素と水を入れらた状態で「活フナ」として販売されます。

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 生きたフナの販売(引用;JA佐久市HP)

かなり驚きの光景ですが、活フナの販売は人気があり、スーパーによっては「おひとり様2袋まで」という条件もあります。

秋を告げる甘露煮

各家庭での食べ方は、昔ながらの甘露煮で柔らかく煮て骨まで食べられるように調理します。秋の小鮒の販売と甘露煮はこの地方に秋を告げる風物詩になっています。

さらなる恩恵、フナ米

フナの水田養殖した事で、フナ養殖を定着させた佐久市ですが、それだけでは終わりません。水田でフナを養殖するという事は、農薬が使えないという事ですから、結果的に「有機農法」に進化しました。

現在、この有機米は「フナ米」という循環型稲作米としてブランドを確立しています。最近話題のSDGs(持続可能な開発目標)でも、「食物と供給する」ことと「自然を保全する」ことの両立が必要ですから、時代が水田養殖に追い付いてきたという事です。

秋には、「フナの甘露煮」をおかずに新米の「フナ米」を食べたてみたいですね。

コイの養殖はどうなった?

さて、フナの水田養殖の話にフォーカスしてきたので、江戸時代に始まったコイの養殖に関しては、あまり触れませんでしたが、現在でも佐久市の名物です。

昭和30年代に化学肥料の導入により、水田では養殖されなくなりましたが、同時に産業として、養殖場を設置して、専業の養殖業と成長しました。

現在では「佐久鯉」といえば、佐久市の一押し郷土料理になっています。

 

フナとフナ米と佐久鯉を求めて長野県に行ってみるのも良いですね。

 

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まとめ

・長野県佐久市では、フナの水田養殖が行われている

・フナの出荷は秋の風物詩

・フナだけでなく、フナ米もブランド化されている

 

 

参考

http://www.geoenv.tsukuba.ac.jp/~chicho/pub/WWW/nenpo/037/06.pdf

https://www.city.saku.nagano.jp/machizukuri/nogyo/shinai/event/2019huna.html

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