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フナ09 【フナのいる里山】兵庫に旅行する前に読む・コウノトリというアイコン

この記事は、兵庫県豊岡市コウノトリの野生復帰にフォーカスします。カニと温泉だけではない豊岡市だけの魅力です。

水田のフナ

水田にフナがいると言えば、すぐに長野県を思い出します。長野県佐久市では、食用のフナを水田に放流する「水田養殖」が行われているからです。

養殖されたフナは「フナ祭り」で販売され、甘露煮にして各家庭で楽しまれています。また、農薬を使わない稲作をする事で、「フナ米」という有機米ブランドを作り上げる事にも成功しています。

一方、兵庫県豊岡市でも、水田にフナを放流したというニュースが流れたことがありました。2007年です。しかし、こちらは食用ではなく、コウノトリの生着を促すための里山再生が目的です。

さて豊岡市里山は再生したのでしょうか?

それではコウノトリ生着までの歩みを見てみましょう。

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 城崎温泉で有名な豊岡市コウノトリの郷でもある

野生コウノトリの絶滅

江戸時代まではどこにでもいる鳥だったと言われるコウノトリですが、明治時代になると農業に有害な鳥との認識で乱獲が始まり、個体数が減少してきました。

さらに、昭和になるとコウノトリが巣をつくる松の伐採や、農業の近代化による里山の消失によって個体数は激減します。そして昭和46(1971)年、国内のコウノトリは絶滅しました。その時、豊岡市は国内最後の生息地でした。

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 豊岡市を流れる円山川では、コウノトリが多く観察された

豊岡地区のコウノトリ

豊岡地域では、絶滅前から、減少するコウノトリへの対策として、人工飼育のため施設を開始していました。現在のコウノトリの郷公園です。

しかし、人工孵化成功までの道のりは非常に困難で、初めて成功したのは絶滅から18年後の1989年でした。

そして放鳥へ

コウノトリを放鳥して、野生復帰させる計画は2003年に起こり、2005年には5匹が野生に放鳥されました。その後、放鳥事業は順調に進み、2017年までに北海道から沖縄に至るまで全国47都道府県でコウノトリの飛来が確認されています。

また、飛来してきたコウノトリの繁殖も確認されていまして、2020年には千葉県生まれのオスと徳島県生まれのメスが栃木県でつがいになった事も報道されました。

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  引用; 小山市HP

豊岡市で放鳥したコウノトリが、千葉県と徳島県に飛来して、そこで生まれたコウノトリが栃木県で出会った訳です。

コウノトリの郷の活動が確実に実を結んでいるという事が分かります。また、全国にもコウノトリが住める場所がまだまだ存在する事も認識できて、我々も意識を変えて生態系の保護に努める事が求められています。

しかし、生態系とは一体何なんでしょうか?

そもそも生態系がイメージしにくい

「生態系の保護」と一言で言っても、一体どうすれば…?という感じになってしまうのは、ごく当たり前の事です。それは生態系自体が目に見えないからです。

ではコウノトリが食べる1日500gのフナやドジョウがいる豊かな里山と言えばどうでしょうか?ちょっとイメージが具体化してきましたね。

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生態系は目に見えないが、コウノトリは見える

それではコウノトリの野生復帰により、豊岡市民の意識はどう変わってきたでしょうか?

「もうコウノトリを絶やしてはいけない・守りたい」という純粋なモノです。彼らはコウノトリ目線で自然環境を見ています。つまり、コウノトリが見える存在であるがゆえに、それをきっかけに生態系を自然に考えてだしているのです。

これは、コウノトリが生態系のアイコンになった事を意味しています。今後、皆様もコウノトリに注目してみてください。

追伸

妻は豊岡生まれで、彼女の曾祖母は子供の頃、「水田でコウノトリを見たら、追い払え」と教育されたという話をしてくれました。そんな妻はコウノトリの絶滅後に生まれ、いわば「コウノトリロストエイジ」。そして息子は現在、学校で「コウノトリ教育」をみっちり受けているようです。価値観は時代とともに変化する事を痛感されられる話です。

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まとめ

コウノトリの野生復帰は里山の復帰でもあった

コウノトリが生態系のアイコンになったことで、皆の意識が変化した

 

参考

http://www.stork.u-hyogo.ac.jp/park_intro/

https://www.city.toyooka.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/912/report-jananese.pdf

https://www.msn.com/ja-jp/news/opinion/鳴門生まれのコウノトリ『歌』、栃木県で婚姻届発行/ar-BB13hOji?ocid=spartandhp

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