【結局、ウナギの値段は下がったのか】シラスウナギ漁の好調から数か月(2020年)
7月に入りまして、土用の丑の日が近づいてまいりました。
2020年は土用の丑の日が2回ありまして、7月21日(火)と8月2日(日)ですから、このあたりでウナギを食べに出かける方も多いのではないでしょうか。
ウナギか食卓に上るまで
我々が食べている大半のウナギは、シラスウナギという数センチのウナギの子供を河口で捕まえて、それを養殖したものです。
シラスウナギ漁の様子は下の写真をご覧ください。毎年、冬になりますと川面にライトを照らして、シラスウナギを一匹ずつ網で掬い上げる漁が行われます。
ここで捕れた約5cm程度(約0.2g)のシラスウナギは、養殖池を持つ養鰻場(ようまんじょう)に移され、そこで6か月から1年をかけて成魚(200~300g)になり、出荷されます。
(左)シラスウナギと(右)養鰻場 引用 日本養鰻漁業協同組合連合会HP
つまり、冬に捕れたシラスウナギは夏の土用の丑の日には市場に出回り、鰻屋さんで我々が食べる事ができる訳です。
だからこそ、シラスウナギがたくさん捕れるかどうかで、皆が一喜一憂するのです。
2020年はシラスウナギ漁が好調
このシラスウナギは良く捕れる年と捕れない年があるために、毎年のようにニュースになりますが、そのほとんどは「捕れない」という悲しいニュースです。
しかしながら2020年はいい意味で裏切られました。
4月に、シラスウナギ漁が好調なために、養殖池が一杯になりそうだという事で、シラスウナギ漁を打ち切るというニュースが流れています。漁獲量としては2019年の5倍ですから、本当に好調だったという事です。(注:2020年の漁期は、2019年冬から2020年春にかけて)
シラスウナギの取引価格も低下
更に2020年7月2日には、水産庁が2020年漁期のシラスウナギの平均価格を発表しました。キロ144万円で前年比34%安だったという事です。
ウナギ稚魚3割安、144万円/水産庁
取引価格が34%安ですから、かなり安くなったという事が分かります。
しかし、我々消費者にとって大切なのは、シラスウナギの価格ではなく、成魚(ウナギ)の価格ですので、大切なのは、その価格降下のメリットを享受できるかどうかです。
それでは、今年のウナギ(うな重)の価格はどうなるのでしょうか?
期待される成魚(ウナギ)の価格低下
先に記載したように、ウナギの養殖期間は最短で6か月ですから、土用の丑の日に出荷されているウナギは、その前の冬に捕れたものです。
つまり、漁が好調だった2020年漁期のウナギが出荷されるという事になりますので、価格が下がる事が期待されています。
それでは、ウナギの価格の実際の変動を見てみましょう。
実際の価格変化は?
2016年以降の5年間で比べてみましょう。
まず、5年間のシラスウナギの漁獲量です。
2018年、2019年は漁獲量が低く、2016年、2017年、2020年は比較的高くなっています。
そして、下のグラフは、その期間中のウナギの卸売価格の変動を示しています。
ウナギの卸売価格、 東京都中央卸売市場データをグラフ化
グラフを見て頂くと、明らかに価格の高い年と低い年がある事が分かります。先のシラスウナギの漁獲量で少なかった2018年と2019年は価格が高く、逆にシラスウナギが好調だった2016年と2017年は価格が下がっています。
さて、問題の2020年ですが、現在(2020年7月20日)のところ、6月までのデータしか公開されていないので、グラフも6月までしかありませんが、あまり変化が無いように思われます。
つまり、うな重の価格も下がる可能性は低いという事です。
まだ予断はできませんが、今後も卸売り価格を更新していきますので、少々お待ちください(7月の価格統計は8月下旬に発表されます)。
値段に関係なく、今年は二回土用の丑の日があるので、私もどちらかの日にウナギを食べたいと思っています。ちょっとしたイベント感があるので、楽しみにしています。
それでは、最後になぜ2020年は2回も土用の丑の日があるのかを見ていきたいと思います。
2020年、土用の丑の日が2回ある理由
土用の丑の日を理解するためには「土用」と「丑の日」を理解する必要があります。
土用(どよう)とは
これは中国の古代思想である五行思想(世界を木・火・土・金・水で説明する思想)に由来し、この土用の期間中は、土(つち)の気が盛んになるために、土木工事等を始めるのに適していない期間とされています。
丑の日(うしのひ)とは
365日を十二支に振り分けた結果、丑に振り分けられた日を言います。当然のように12日ごとに現れます。
土用の丑の日とは
土用期間中の丑の日を言います。
カレンダー見て頂ければ、7月21日、8月2日が土用期間中の丑の日であるという事が分かって頂けると思います
このように2回ある年は、初めの丑の日を「一の丑」と言い、次の丑の日を「二の丑」と呼びます。
補足説明
先に説明しましたように立春・立夏・立秋・立冬の前約18日間が土用の期間ですから、実は2020年は土用の丑の日が7日間ある事になります。
冬:1月23日
春:4月16日、4月28日
夏:7月21日、8月2日
秋:10月25日、11月6日
一般的にウナギを食べるのは夏だけですが、どうしても食べたい時には、自分やご家族に対する言い訳に、これを使えるかもしれませんね。
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本の紹介
「サカナとヤクザ」 鈴木智彦さんの密漁ビジネスの潜入ルポです。ウナギの密漁だけでなく、アワビやナマコの問題も記載されています。
「世界で一番詳しいウナギの話」 ウナギの権威、元東京大学・塚本先生の著書です。先生は世界で初めてウナギの卵を見つけた方でもあり、ウナギの未来を最も考えている方です。
まとめ
・ウナギの価格が下がるのはもうちょっと時間がかかるのかもしれない
・今年は土用の丑の日が2回ありますので、どちらかではウナギを楽しみたいですね
参照
日本養鰻魚業協同共同組合連合会
http://www.wbs.ne.jp/bt/nichimanren/abtunagi.html
シラスウナギの価格
https://www.suikei.co.jp/ウナギ稚魚%ef%bc%93割安、%ef%bc%91%ef%bc%94%ef%bc%94万円%ef%bc%8f水産庁/
二ホンウナギ稚魚国内採捕量の推移
https://www.jfa.maff.go.jp/j/saibai/unagi.html
ウナギの価格:東京都中央卸売市場 市場統計情報(月報・年報)
http://www.shijou-tokei.metro.tokyo.jp/asp/smenu2.aspx?gyoshucd=2&smode=10