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【右利きと左利き】魚類の利き手(カニ・ナマズ・イワシ・最新研究)まとめ

ヒトに右利きと左利きという利き手があるように魚類にも利き手がある事は昔から知られています。この記事では現在報告の魚類にフォーカスしまして彼らの利き手のある生態を紹介したいと思います。

ワタリガニ

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いきなり魚類ではありませんが、節足動物であるワタリガニにも利き手があります。

ワタリガニは肉食で小魚やゴカイ、貝などを食べて生活をしています。岡山県の水産研究所によりますと、ワタリガニにアサリを餌で与えた場合、約8割が右の「はさみ」で貝を砕いて食べたと報告されています。

挟む力も右のほうが強く、形態も右のほうが凹凸が大きく貝の殻を砕きやすい形状になっていました。

さらにこの右利きがいつから始まったのかを調べる研究では、成長過程の中で「はさみ」が初めて確認される約3mmの幼生(メロガパ)でも9割が右利きだったと報告されています。

ナマズ

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ナマズの回転行動にも利き手がある事が知られています。ナマズは回転する際には、体を曲げて反対側の胸ビレを動かして曲がります。魚にとって胸ビレは解剖学的・活性学的にヒトの手に当たるヒレです。

1998年の研究報告では、ナマズの回転行動をビデオに撮影して、9割の個体が右のヒレを多く動かして、左旋回した事が報告されています。

イワシ

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昭和の魚博士・末廣恭雄博士によると、水族館にイワシを入れると、その2/3が右回りで、1/3が左回りだと言います。この右回りのイワシと左回りのイワシは、水槽の中で回遊する場所を変えて、例えば上層部が右回りなら、下層部は左回りとなる。

さらに博士曰く、 イワシをアミ焼きにすると右利きのイワシは右側に、左ききは左側に反り返るとの事です。利き手は使う頻度が高いので、筋肉の発達が異なると考えられます。

この発見は50年前の事ですので、研究報告という形にはまとまっていませんが、大阪の海遊館で確認したところ9割以上が右回りで、時々、その群れの外側を左回り個体が回っていました。

種類によって決まっているのか

ここまでを読みまして、「ワタリガニは右利きで、ナマズも右利き…もしかして種によって、右と左が決まっているのか?」という感想の方もいらっしゃると思います。

もちろんその傾向はあるのですが、最新研究では、生まれた後にそれが決まるという報告もあります。

最新の研究から

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それでは最新の研究に目を移してみましょう。

右利きか左利きかは、生まれたあとの学習で決まる

魚の右利きと左利きが学習で決まる事が名古屋大学富山大学よるアフリカに住む鱗食魚という魚の研究報告で、2017年に明らかになっています。

鱗食魚は名前の通り、魚のウロコをはぎ取って食べるという習性があります。研究チームは、その鱗食魚が「獲物」に右後ろからアプローチするのか、左後ろからアプローチするのかという観察研究を行いました。

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      引用;名古屋大学HP

 研究の結果、幼魚のうちは両方向から獲物にアプローチするのですが、徐々に過去の餌にあり付けた方向を学習して、最終的にその方向のアプローチする習性ができる事が分かりました。つまり学習によって方向を決めているという事です。

また、利き方向の決まっていない幼魚でも、口の形や運動性能には左右差があったという事ですから、遺伝的に決まっている部分と生まれたのちに学習によって決まっている部分があるのだと証明した事になります。

なぜ利き手があるのか

この問題には未だ明確な回答がありません。しかしヒトの内臓を見ますと左右非対称ですし、魚だってそうです。脳の機能も左右非対称だという事も知られていますので、そんな体の関係もあると思います。

また利き手を持つことで「得意なスタイル」を持つことができます。これが生存に役立つ戦略の一つであったという事は、鱗食魚の例から見ても、明白な事のように感じます。

まとめ

・魚にも利き手(ヒレ)がある

・遺伝的に決まる要因と、生まれた後に学習によって決まる要因がある

 

参考

https://www.pref.okayama.jp/uploaded/attachment/141907.pdf

http://eprints.lib.okayama-u.ac.jp/files/public/5/56002/20180614132611188193/O0004489_fulltext.pdf

左対右きき手大研究 著者: 八田武志

http://www.lapin.co.jp/times/bt/brtimes71.pdf http://www.nagoya-u.ac.jp/about-nu/public-relations/researchinfo/upload_images/20170824_sci_1.pdf

http://www.nagoya-u.ac.jp/about-nu/public-relations/researchinfo/upload_images/20170824_sci_1.pdf

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