アマゴの生態12【まとめ】特徴・生態・生態系・進化・食事・感染症
このブログではシマノフィッシングカレンダーから魚をピックアップしまして、その生態を紹介しています。
3月の魚はアマゴでしたが、この記事では過去に連載しました11回を1ページにまとめました。
シマノカレンダー3月の魚拓「雨子」
アマゴの特徴
アマゴは、ヤマメやニジマスとともにサケ属の仲間であり、特徴的なパーマーク(Parr Mark)という模様が観察されます。
この模様は直訳すると「サケの幼魚の模様」という意味になり、当然イワナやサケの幼魚にもあります。
パーマークの無い突然変異種(イワメ)もいますが、基本的にはこの模様はサケ類に共通しています。
参考)サケの幼魚のパーマークとイワメに関しては以下を参照ください
その他、サケ類の外見的な特徴としては、アブラビレというヒレがあります。
アブラビレという名前の通り鰭条がない(骨がない)ヒレで、このヒレは効率よく泳ぐために必要だと考えれています。
何かと共通点が多いサケ属の仲間たちですが、彼らはどのような生活をしているのでしょうか?
生態(陸封型と降海型)
アマゴとサツキマスは同じ種類の魚です。
アマゴは川にとどまる個体(陸封型)で、サツキマスは海に降りる個体(降海型)です。
陸封型のアマゴは、稚魚が性成熟して、そのまま大人になった形なのでパーマークはそのまま残ります。
一方、降海型のサツキマスになるとパーマーマークが消えて体が銀色になり、海に降りるための準備が始まります。
それではアマゴ以外のサケ類はどうでしょうか?
アマゴだけでなく、ヤマメやイワナなども、同じように陸封型と降海型がおり、海に降りて成長して帰ってきます。
海に出てからの行動に関しては、シロザケの研究が進んでいます。
その研究によりますと、シロザケは海にでてアラスカ沿岸までを、4年で16000Kmほど移動します。
年間4000Kmですから、クロマグロと同じくらいの移動距離です。
産卵のための遡上
アマゴ、ヤマメ、イワナ、ニジマスの降海型は、サケと同様に海で成長してから、川に遡上し、産卵します。
これも研究の進んだシロザケの研究ですが、
生まれた川に戻ってくる母川回帰という習性は、川の中に微量に含まれるアミノ酸を嗅ぎ分ける能力によると言われています。
母川回帰に関するサケの迷路実験に関してはリンクを参照ください
死と生態系とのつながり
サケ類は遡上して、産卵をすると、そののちしばらくして死んでしまいます。
力尽きたサケ
死んでしまう原因としては、遡上を始めたサケがほとんど餌を食べない事による消耗だと考えられます。
これは、海に出るとサケ類は食性が変わってくるので川には適当な餌がないことと、産卵にエネルギーのすべてをつぎ込むという生態のためだと考えられます。
しかしながら、サケ類の死は無駄ではありません。
死んだサケ類は、川にいる水生昆虫や、森にいる熊・狐・鳥の餌になることで、森や渓流を豊かにします。
下の図にそれをまとめています。
サケの遡上によって森林が豊かになっているという事ですが、
これは研究によっても明らかになっています。
それによりますと、サケの遡上する森では、遡上がない森に比べ、渓流周辺の木々に海由来の窒素がたくさん使用されているという事です。
つまりサケ類から運んできた栄養が生態系の中に再循環しているという事になります。
ここまでサケ類のドラマティックで、生態系も巻き込んだダイナミックな生態を見てきました。
それでは彼らはどのように進化して現在の生態になったのでしょうか?
サケ類の進化
サケ類は海と川を行き来するという生態を持っていますが、元は淡水魚から進化したのか、海水の魚から進化したのかという素朴な疑問があります。
研究報告からは、サケ類は古いグループから、新しいグループになるにつれて、海への依存度が上昇する事が知られており、もともと淡水魚だったのではと考えられています。
注)ここでいう海洋依存度とは海で過ごす時間的な問題だけでなく、空間的にもどのくらい 広く回遊するかも含めた表現になります。
また、サケの産卵スタイル(産卵数が少ない・卵が大きいという特徴)から考えても、淡水魚の性質が強いと考えられています。
つまり、現在の学説としては、川の淡水魚であった「サケ属の祖先」が、生活域を広げるために川から海に出たのが「現在のサケ属」ではないかと考えれています。
サケの生態と進化を知りまして、
今後は、森と渓流と海に感謝をしながらサケを食べたいと思いますが、
続いて、食材としてのサケにフォーカスしたいと思います。
食べ物としてのサケ類(白身魚)
下の写真はアマゴのお刺身です。
アマゴを含むサケ類の身はピンク色でなんですが、白身に分類されています。
アマゴの刺身
なせ、白身なのにピンク色なのかという問題ですが、
ピンク色は、甲殻類に餌に含まれるアスタキサンチンという色素が蓄積しているからです。
しかしながら、渓流にすむ野生のアマゴは、あまり甲殻類を食べないので、実は身が白く、本格的にピンク色になるのは食性の変わる海に降りてからです。
ちなみに養殖のアマゴがピンク色なのは、餌にアスタキサンチンが含まれているからです。
感染症
川魚は感染症に気をつけなければなりません。
野生のアマゴ(陸封型)には顎口虫などの寄生虫がいる可能性があるので、お刺身を食べたいときは、管理釣り場で養殖されたものを食べるようにして下さい。
さらに、海に出た降海型のサケ類には、アニサキスが寄生している可能性がありますので、こちらもお刺身は注意する必要があります。
ただし、回転ずしなどのサーモンは、養殖されているという点と、一度冷凍されたものが使用されているという点から、安心して食べる事ができます。
我々消費者にとって、感染症は常に心配事の一つですが、養殖の現場でも問題になっています。
どのような対策が取られているのでしょうか?
魚用ワクチン
ヒトと同じように、魚も感染症で病気になってしまいます。
例えば、ビブリオ菌という細菌は、アマゴを含めるサケ類に感染して、出血や潰瘍を伴う症状を引き起こす事が報告されています。
特にニジマスにおいてはその被害が大きいので、養殖場ではワクチンを使用して予防しています。
魚用のワクチンはヒト用のワクチンと共通点が多く、ワクチンの性質、効果、法律による承認体制などは同じす。
養殖の魚は、やがて人の口に入りますので、安心なものが使用されているという事です。
魚もワクチンで感染症予防
まとめ
・サケ類の外見的特徴はパーマークとアブラビレ
・陸封型(アマゴ)と降海型(サツキマス)がいる
・遡上し、産卵すると死んでしまうが、海の資源を森に循環させる役割がある
・サケ類はもととも淡水魚から進化した
・野生のサケ類の生食には注意が必要
・養殖では魚用ワクチンが活躍している