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コブダイの生態04【性転換も脳科学】

前回の記事では、魚が群れる秘密に関して紹介をしました。

 

shigehara-nishiki.hatenablog.com

今回の生態04では、コブダイの性転換の謎に迫ります。

f:id:Shigehara_Nishiki:20200413222616j:plain 今はオスなんですが、昔はメスでした


それでは、まず、コブダイの生態の3つのポイントです。

1、コブダイはすべてメスとして生まれ、群れで生活する

2、群れの中で一番大きな個体が性転換してオスとなる

3、そのオスが複数のメスを囲い込んでハーレムを形成する

コブダイの生態02 姉妹であり、夫婦でもあるのか…?

このポイントを見ると、コブダイがとても特徴的な生態をしていると事が分かります。特に自然に性転換するという現象は、我々人間からすれば、普通では考えられない不思議な現象です。

一体、どうやって性転換しているのでしょうか気になるところです。

性転換する魚達

実は魚類の世界では。性転換は100種類以上の魚に観察される現象なので、研究対象にもなりやすい領域です。その中で2019年のベラ科(コブダイもベラ科)の魚の研究報告では、かなり細かい部分まで観察されています。

性転換のメカニズム

群れからオスの除くと、一番大きいメスがホルモン(コルチゾール)を出し、それが脳に作用する(ここまで数分で、脳がオス化して、オスの行動が観察される

卵巣を維持するメスホルモン(エストロゲン)が低下する一方で、精巣を発達させるオスホルモン(アンドロゲン)が上昇する(ここまでで体内ホルモン上は、オス化が終了)

性ホルモンの影響で生殖腺の遺伝子のスイッチが「メス」から」「オス」に変化する(細胞の中では、すべての遺伝子が働いているわけではなく、どの遺伝が働いているかは組織によって異なります。上記では生殖腺でメス化遺伝子がオフになって、オス化遺伝子がオンになる状態です)

④ 結果として、生殖腺が精巣になる(ここまで10日間で、心も体もオスになる)

 

まず、脳の変化が第一段階、生殖腺の変化が第二段階ということです。

 

人間を含めた哺乳類も、基本形はメスとして生まれで、胎生期から生まれてしばらくの間にオス化すると言われています。

このオス化の現象は、ある一定の期間を過ぎると起こらないとされていますので、私たちは単に覚えていないだけなんですね。

コブダイの性転換も不思議な現象に思われますが、異なるのは期間の問題だけで、私たち人間とある程度の共通の機構なのかもしれませんね。

 

まとめ

・性転換は行動変化を伴う脳の変化から始まります

・脳っていうと「思考」とか「意識」とか考えがちですけど、いろいろやっていますね。まさに司令塔という感じです…

 

参考

・Liu H, Todd EV, Lokman PM, Lamm MS, Godwin JR, Gemmell NJ.

Mol Reprod Dev. 2017 Feb;84(2):171-194. doi: 10.1002/mrd.22691. Epub 2016 Sep

https://theconversation.com/what-we-learn-from-a-fish-that-can-change-sex-in-just-10-days-129063

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