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フナ05【金魚との関わり】生態と歴史、科学、芸術

「川に返った金魚は三代でフナになる」

漫画家・安野モヨコさんが原作の「さくらん」でのセリフです。

ストーリーの中では「遊女として綺麗で居られるのはヒトに飼われているから」という意味で使われているのですが、金魚の先祖はフナですから言い得て妙です。

今回のフナの生態では、その金魚にフォーカスを当てたいと思います。

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キンギョとは

分類学的にはコイ科フナ属キンギョです。

フナ属に分類されるのは、ゲンゴロウブナやギンブナなどの「一般的なフナ」と「キンギョ」だけですから、かなりの近縁だと分かります。

順序としては、フナからヒブナ・和金のようなシンプルな種が生まれて、やがて琉金(りゅうきん)のような華やかな種が生まれてきました。

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家庭での飼育では、体長が5㎝ぐらいで、寿命は3~5年ですが、ギネス記録では体長で47㎝という記録がありますし、寿命では43年という記録もあります。

最近では、琵琶湖で48㎝の金魚が釣れたというニュースもありました。

 

キンギョの起源

金魚の始まりは定かではないですが、1700年前、中国でフナの中から赤い個体が見つかったとの記述が最も古いとされています。

日本では、最古の金魚飼育マニュアルである「金吾養玩草」の中で、1502年(室町時代)に中国から泉州(大阪)に渡来したとの記述があります。しかしながら、当時は養殖技術がなく、現在の金魚は、江戸時代初期に再び渡来したものが養殖されたものであるとされています。

 

それでは、当時の江戸はどんな感じだったのでしょうか?

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    江戸時代と言えばサムライです…

金魚は高価なペットで、養殖は武士の副業でもあった

江戸中期に、井原西鶴が書いた「西鶴置土産」のなかでは、大名の子供が5~7両で金魚を買い求めたという記述があります。

江戸中期当時の1両は現在の価値に直すと約5万円なので、金魚がかなり高価であったと考えれます。

それに加えて、金魚をペットとして飼う大名が、金魚の養殖を推奨したために、職にあぶれた下流武士の副業として「金魚養殖」が盛んになり、江戸全体に広がっていくようになりました。

 

また当時は、ガラスの製造技術もオランダから輸入され、ガラス製の金魚鉢も利用されていましたし、メディアとして利用されていた浮世絵にもされて、一大ブームとなったようです。

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歌川国芳 きん魚づくし ぼんぼん

ちなみに…

江戸時代には田舎侍の事を「フナ侍」と呼んでいたという事です。

そのフナから生まれた金魚の養殖を副業にしていたのですから、その侍たちは何と言われていたのでしょうか。気になりますね…。

 

そして現在

明治時代になりまして、金魚は庶民にも親しまれるようになりました。現在でも金魚すくいのないお祭りは見た事がないほどです。フナから始まった金魚文化が完全に定着している事が分かります。

さらに、現代では、科学や芸術といった変わった取り組みもありますので紹介させていただきます。

宇宙での実験

1994年には、愛知県の和金を積んだスペースシャトルが宇宙に出発しています。

シャトル内では重力がほとんどなくなるので、宇宙飛行士達はいわゆる「宇宙酔い」という状況になると言われています。その環境の中でヒトがどのように微小重力に適応するかを研究するために、金魚が使われています。その金魚の子孫は現在も健在で、愛知県の弥富市歴史民俗資料館に展示されています。

さらに2010年には国際宇宙ステーション「きぼう」では、骨の再生を研究する目的で金魚のウロコが使われています。ウロコが使われているのは、ウロコを構成する細胞群と骨を構成する細胞群が同じだからで、ウロコを研究すると骨の事が予測できるからです。こちらの研究には奈良県大和郡山市の金魚のウロコが使用されています。

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無重力で泳ぐ金魚を見たいものです

そして最近では、金魚をアート作品にする作家さんも現れています

金魚解放運動(アート作品)

2014年の石橋友也さんによる作品で、文化庁メディア芸術祭にて受賞されています。

この作品は、「金魚に逆品種改良を施し、祖先のフナの姿に戻し、人間の手から解放する」という現代アートプロジェクトです。逆品種改良とは、なるべく系統の異なる金魚同士で雑種を得て、その中でフナに近い種を選別するという作業です。


金魚解放運動(日本語字幕) 

さすがに3代ではフナには戻らなかったようですが、5世代目にはフナのような品種が生まれています。

https://www.shibashiishibashi.com/kingyo

なぜこのような先祖返りをするかと言うと、金魚特有の遺伝子構成に秘密があります。

ヒトを含めて、ほとんどの生物は遺伝子を2セットずつ持っているのですが、金魚は4セットずつ持っています。つまり金魚の体は、太古のフナの遺伝子を残したまま状態で、金魚の遺伝子も持っているという秘密があるのです。石橋さんの作品は、この金魚の性質を利用して、掛け合わせによってフナの遺伝子が強く出る個体を出現させた作品という事です

そして、この遺伝子が4セットずつあるという性質は、金魚の兄弟が全く似ていないという現象にもつながっていて、石橋さんはそれも「Brother」という作品にされています。

https://www.shibashiishibashi.com/brother

芸術の事を理解するのはとかく難しいですが、ヒトと生き物の関係を考えさせられる作品になっています。

 

ペットとして、歴史の視点として、生物として、芸術として、もう一度、金魚にフォーカスしてみてはいかがでしょうか?

最後に

江戸時代から続く金魚養殖の町、大和郡山市ですが、現在でも金魚の販売生産量で日本一です。本当に町中が金魚だらけで、マンホールも金魚柄でした。

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   大和郡山市のマンホール

まとめ

・金魚はフナから生まれた

室町時代に中国から初めて渡来し、江戸時代にはブームとなった。

 

参考

カラーガイド金魚のすべて著者: 川田洋之助、 杉野裕志

https://www.imes.boj.or.jp/cm/history/historyfaq/mod/1ryou.pdf

http://www.sasappa.co.jp/online/abstract/jsasem/1/053/html/1110530413.html

http://kingyo-miwa.tcp.jp/index.html

https://www.city.yatomi.lg.jp/kurashi/1000296/1000301/1000303.html

http://www.tmd.ac.jp/dent/oan2/resS.htm#01

http://archive.jmediaarts.jp/festival/2014/art/works/18aj_Goldfish_Liberation_Movement/

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