アマゴの生態09 魚もワクチンで予防接種【感染症の話】
前回の記事では魚たちもウイルスなどの感染症にかかると紹介しました。
今回はそんな、魚たちが感染症と戦うためのワクチンに関して紹介したいと思います。
えっ、魚にワクチンなんてしているのという方も多いかと思いますが、人間に接種させるワクチンと同じ原理のワクチンが使用されています。下の図には、ヒト用ワクチンと魚類用ワクチンの共通点と異なる点を示しました。
異なる点もありますが、それは使用方法だけで、モノとしてのワクチンの性質や、効果・承認体制としてはヒト用ワクチンと同じようです。つまり怪しい民間療法のようなものではなく、根拠に基づいたワクチンという事です。
個人的に面白いと思うのは、ヒトは恒温動物なので、ワクチンを接種する前に体温で体調を判断したりしますが、変温動物の魚類では「体温=水温」なんで、測定する意味がないと言うことです。
ちなみに、魚ではワクチンを打つのに適した水温(=体温)というのがあって、その体温でワクチンを打つと免疫機能がよく働いてワクチン効果が高くなるという研究もされています。
例えば、ニジマスなら水温10度が適温で、ブリなら水温25度が適温だと報告されています。
我が国の養殖業において、ウイルス・細菌による感染症の被害額は約100億円と言われていますから、研究も盛んですし、感染症予防対策もきちんとされているようです。
ではサケ類の感染症のワクチン事情はどうでしょうか?
アマゴを含むサケ類に感染するビブリオ菌
アマゴを含むサケ類で問題となる感染症はビブリオ菌が原因となるものです。
感染すると出血や潰瘍ができるという症状が出ます。
ビブリオ菌はサケ類にはすべて感染しますが、被害が一番大きいのはニジマスです。
ニジマス用のワクチンでは、ワクチン接種後最大6か月の予防効果が報告されていまして、感染症の拡大防止に役に立っています。。
このビブリオ菌は水中に常にいますので、感染原因は飼育環境の変化などストレスによる免疫力の低下が原因となるとされています。こんなところまで、ヒトと同じですね。
魚類用ワクチンは水族館でも使われているとの事ですので、そのうち、観賞魚用のワクチンも出てくるかもしれません。
まとめ
・魚類のワクチンも存在する
・ワクチンの性質、効果、法律による承認体制など、ヒト用ワクチンと共通点が多い
参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsfp1966/34/3/34_3_151/_article/-char/ja/
https://www.yoshoku.or.jp/vaccine/
https://shingi.jst.go.jp/past_abst/abst/p/09/906/115.pdf
http://nichiju.lin.gr.jp/mag/06501/a4.pdf
http://www.pref.tokushima.jp/_files/00209687/s_dayori76-1.pdf