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【友釣りのタイミング・いつがベストか?】アユの生態から考える(アユ02)

アユの一般的な釣り方は「友釣り」です。

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これは「おとりアユ」と呼ばれるアユを仕掛けに付けて川に流し、それを攻撃してくるアユを針に引っ掛けて釣るという方法です。

アユは縄張りを形成する生態があるために、外部から入ってきたアユを排除しようと攻撃する習性があるために成立する釣り方になります。

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  左がおとりアユで、右が釣れたアユ

それでは、その習性から考えた場合、アユの友釣りのシーズンで何時が一番釣れるのでしょうか?

その「何時が友釣りのタイミングとしてベストか?」という疑問に答えるために、まずアユの生活史から見ていきましょう。

アユの生活史

アユの寿命は一年です。成魚は秋から冬にかけて、河口に降りて産卵をします。

そこで生まれた稚魚は流されるように海に出ていき、プランクトンを食べて成長します。その後、桜の咲くころになると、沿岸域から河口へ移動して遡上を開始します。

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  遡上する小鮎

この遡上時期には縄張りを形成しておらず、川が稚アユで真っ黒になるような密度で遡上する姿がニュースなどで報じられます。

そして、初夏から秋まで、アユは川底の藻類を食べて成熟します。櫛状の歯で石の藻類をこそげて食べるために、この時期の川底の石には「はみ跡」と呼ばれるアユの歯後が付くことが知られています。

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 石の黒い部分が「はみ跡」 引用:山本大輔(2013)豊田市矢作川研究所 月報

そして、この時期こそ、餌場を確保するためにアユが縄張りを形成して、侵入してくるアユを攻撃するために友釣りの対象になる時期になります。

この期間を終えますと、成熟後のアユは再び河口に降りて、産卵を行い、一年の寿命を終えます。

 

縄張り行動

さて、友釣りのキーポイントになる「アユの縄張り活動」ですが、縄張りを張るのは先述のように「餌場の確保」が目的です。

しかしながら、すべてのアユが縄張りを持って餌場を確保している訳ではありません。縄張りを持っていない、いわゆる「あぶれアユ」と呼ばれるアユもいますし、仲良く暮らす「群れアユ」などもいます。

縄張りアユ

縄張りアユは、川の中で「瀬」と呼ばれる水深が浅く、流れが速い場所で且つ、大きな石(50cm)がゴロゴロとある場所を好みます。大体1m2の縄張りを作り、川底の石に張り付いた藻類を独り占めします。早い時期に遡上した個体は、より条件の良い場所に自分の縄張りを作ります。

あぶれアユ

条件の良い場所が先行者の縄張りで占められた時に、縄張りを作れないアユとして「あぶれアユ」が現れます。水深が深く、流れの緩やかな「淵」で単独で活動し、縄張りアユの縄張りに入っては、藻類を食べるので、そこで「縄張りアユ」の追い出し行動が見られます。

つまり友釣りに使われる「おとりアユ」は自然界の「あぶれアユ」を模倣したモノだと言えます。

群れアユ

普段は「淵」と呼ばれる場所に住んでいますが、時折、縄張りアユの縄張りに集団で入って、縄張り内の藻類を食べます。縄張りアユもすべてを追い出す事ができないので、無理に追い出したりしないようになってしまいます。

 

一口にアユと言っても様々な生活をしている事が分かります。

それでは、この違いはどこからくるのでしょうか?

実は、川の面積に対するアユの密度に依存する事が知られています。

アユの密度

アユの縄張り活動は、アユの密度によって異なることが知られています。下の図は、密度の推移とアユの生態について示しています。どの時期がアユの友釣りに向いているか見てみましょう。

f:id:Shigehara_Nishiki:20200614200042j:plain    参考:Yuki Katsumata et al. (2017) Scientific Reports vol. 716777を改変

遡上後の早期(アユが少ない時)

上図のAのように、川にはアユが少ないですから、アユは自分の好きな場所(瀬のような水深が浅く流れの速い場所)に縄張りを張ります。川に対するアユの密度は低く、それぞれが縄張りを張ります。

遡上後の中期1(アユが増加している時)

中期になると、遡上の第2陣・3陣がやってきますから、密度が上昇します。そうすると縄張りを形成できなアユ(あぶれアユ)が水深が深く流れの緩やかな淵に現れます。この「あぶれアユ」が縄張りに入ってきますと「縄張りアユ」が攻撃を開始しますので、この時期が最も友釣りに適した時期となります(上図のB)。

遡上後の中期2(アユがさらに増加している時)

そして、更に密度が上がると、群れアユが現れます。群れアユが増えると縄張りアユは、縄張りを守るための労力を放棄して、自ら縄張りをあきらめ、自らも群れアユとなります(上図のC)。

このすべてが群れアユになる時の密度は、1m2あたり4.1~5.5匹以上の密度であるという事が観察や実験から算出されています。

遡上後の後期(アユが減少してきた時)

後期になると、釣り人に釣られた個体が増加する事や、成熟し川を下る個体が増えてきますので、川の面積に対してアユが減少してきます。

図の矢印で示されているように、アユが減少していく際には、上図の(B)の状態を経ることなく、元の縄張りアユのみが居る状態に戻るのが特徴です。この時のアユの密度は、1m2あたり1.5匹以下である事も分かっています。つまり、減少している時期は(B)の状態にはならないので、友釣りに向いている状態にはならないという事です。 

では、いつ釣りに行くのがベストか?

ここまでを見ますと、図の中で(A)から(B)に移行した当たりが、もっとも、アユの縄張りを守る生態が強く出るという事です。

現在、多くの川では、4月頃から放流を開始して、6月に釣りが解禁になります。また自然遡上してくるアユは5月ぐらいからですので、解禁日の6月ぐらいはアユの密度が上昇しているちょうど良い時期だと思われます。

また、アユが減少している状態では、群れアユの状態から、縄張りアユの状態に一足飛びに戻ってしまいますので、友釣りには不向きだと考えられます。

どうせ友釣りに行くなら早い時期が良いですね。

関連記事

shigehara-nishiki.hatenablog.com

まとめ

・アユの友釣りに行くなら、解禁日の直後が良い

・理由は、解禁日の直後は、アユの個体数が増加しつつある時期で、縄張りを守ろうとする習性が強く出ているから

・その時期を超えると、アユの縄張りを守る習性が弱まるので、友釣りには向いていない状態になる

 

 

参考

豊田市矢作川研究所 月報(2013)No.175

http://www.yahagigawa.jp/archives/003/201508/17eadfb934809c99b482f89d71888119.pdf

 

アユの密度と縄張り活動に関する論文

Yumi Tanaka et al. Historical effect in the territoriality of ayu fish. Journal of Theoretical Biology (2011) vol.268, 1, 98-104

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0022519310005230?via%3Dihub

Yuki Katsumata et al., Territory holders ant non-territory holders in Ayu fish. Scientific Reports (2017) vol. 716777. doi.org/10.1038/s41598-017-16859-4

https://www.nature.com/articles/s41598-017-16859-4

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