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【本当にヒラスズキなのか?】美味しいカブト焼き(スズキ16)

ヒラスズキは絶品ですが、市場に出回る事が少ないために、食べる機会は非常に限られます。それがゆえに、ヒラスズキが釣れた際には、大切に食べなければなりません。お刺身や洗いは当たり前ですが、ヒラスズキの頭部は大きいので、カブト焼きに向いています。

先日、四国の磯でヒラスズキと思われるスズキを釣ってきましたので、さっそく料理に取り掛かろうと思いましたが、その前にこれがヒラスズキであるかという検証を行いたいと思います。

【磯場で検証】600円のスルルー釣りでヒラスズキは釣れるのか?(スズキ15)

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   実際に釣ってきたヒラスズキと思われる個体(55㎝)

まずは心の準備(ヒラスズキなのか?)

魚の正体を知れば、美味しさが倍増しますので、まずは本当にヒラスズキかどうかを判定する必要があります。

特にヒラスズキは、普段目にすることのない魚ですから、「磯で釣ってきたからヒラスズキに間違いない」という先入観を捨てて、冷静に確認していきましょう。

外見的特徴

日本には3種類のスズキ(マルスズキ・タイリクスズキ・ヒラスズキ)が居ますので、どの種類かを見極めます。f:id:Shigehara_Nishiki:20200605180247j:plain

    引用;Kōji Yokogawa(2019)Zookeys 859 69-115

タイリクスズキは背中に比較的はっきりとした斑点がありますので、釣ってきた個体とは明らかに違うという事が分かります。

では次に、マルスズキとの違いです。体高の違い・目の大きさの違い・尾びれの付け根の広さの違い等が報告されていますが、大量のマルスズキとヒラスズキを同時に釣る事など無いですから、直接比較はできません。

釣り上げた個体を見て「何かちょっと肩あたりが盛り上がってる気がする・・・」という程度の感覚しか持てませんので、判定は下記の2つの方法を使うことにしました。

① 第二背びれの軟乗数

スズキの背びれは、前側(第一背びれ)と後ろ側(第二背びれ)に分かれています。

そのうち、第二背びれにある「筋のような軟骨(軟乗)」の数で、マルスズキとヒラスズキの違いを判断する事ができます。

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   引用;Kōji Yokogawa(2019)Zookeys 859 69-115(グラフは日本語に改変)

グラフを見て頂くと、マルスズキの軟乗数は12~14本であるのに対して、ヒラスズキの軟乗数は14~16本となっています。つまり、この法則を使えば9割以上の確率でヒラスズキを判定できるという事です。

実際の判定

第二背びれを広げて、実際に軟乗数を数えてみました。

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15本ありました。これは間違いなくヒラスズキです。つり場では、ヒレを広げて確認する時間などありませんから、うちに帰ってゆっくりできる判定方法です。

② さらなる検証(下顎の鱗列)

また、ヒラスズキの特徴として、下顎の鱗の列が発達している事も知られています。マルスズキの場合は、大半の個体には鱗の列が無く、あったとしても未発達なために、これも判定に使われます。

下の写真はスズキのアゴを斜め下から見た実際の写真となります。

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  白い矢頭が下顎の鱗列(片方のみ撮影)

ありました。はっきりとした鱗の列です。

ヒラスズキ判定の結果

以上のように、①第二背びれの軟乗数、②下顎の鱗の列の有無から、私が釣り上げた個体はヒラスズキであると結論しました。

これで初めて料理に取り掛かれる状態となります。

 

カブト焼き

それではヒラスズキである事が判明したので、感謝して料理を開始します。

ヒラスズキは刺身や、皮を付けたままでしゃぶしゃぶにするなど、美味しい料理が楽しめるのは勿論ですが、頭部も大きいので、頭回りの身が多くカブト焼きにできます。また、カマの部分も付ければ、豪華な料理になります。

調理はシンプルです。

  1. カマの部分を付けた状態で頭を切り取る
  2. エラを取って、内部の血合いを洗う
  3. 水気をキッチンペーパーでふき取る
  4. 塩をまぶす
  5. オーブンで焼き上げる(できあがり)

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刺身やソテーでは味わえない、内部の熱で蒸されたホクホクとした身が何とも美味しい一品です。

オーブンによって焼け具合が異なりますので、見ながら焼いてください。頭部が大きいと感じた時には半分に切って良いですし、魚焼きコンロでパリッとさせる方法もありますので、挑戦してみてくだい。

追伸

魚を三枚におろしている際に、刺身をつまみ食いしたのですが、脂の乗った白身があまりにも美味しかったので、背骨から中落を集めて、更に小さなお刺身を作ってしまいました。

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関連記事

shigehara-nishiki.hatenablog.com

最後に

ヒラスズキは滅多に手に入るものではありません。釣りなどで入手できた際には、感謝をして調べ、すべての身を食べつくす気持ちで楽しみましょう。

 

参考:

Kōji Yokogawa Morphological differences between species of the sea bass genus Lateolabrax (Teleostei, Perciformes), with particular emphasis on growth-related changes(2019)Zookeys 859 69-115

https://www.researchgate.net/publication/334636204_Morphological_differences_between_species_of_the_sea_bass_genus_Lateolabrax_Teleostei_Perciformes_with_particular_emphasis_on_growth-related_changes

 

村瀬敦宣 屋久島産標本に基づくヒラスズキLateolabrax latusの 再記載と河川における生息状況(2012)魚類学雑誌 59(1):11–20

https://www.researchgate.net/publication/266262710_Redescription_of_the_Temperate_Seabass_Lateolabrax_latus_from_Yaku-shima_Island_Kagoshima_Prefecture_southern_Japan_with_notes_on_the_habitat_in_the_rivers

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