【タイリクスズキvol.4】静岡県のマンホールで発見(スズキ14)
現在、日本には3種類のスズキが住んでいます。
まず、一般的にスズキ(シーバス)と呼ばれるのは、日本沿岸全域に住むマルスズキうを指します。次に主に西日本の磯に住むヒラスズキ。最後に主に中国・台湾に住むタイリクスズキ(ホシスズキ)です。
3種類のスズキ
それでは、その3種類のスズキの特徴を見てみましょう。
引用;Kōji Yokogawa(2019)Zookeys 859 69-115
マルスズキに対してヒラスズキの特徴は体高がある事です。また体が扁平であるという特徴があります。一方、タイリクスズキの特徴は背中の部分にはっきりとした黒い斑点がある事です。
そして、このタイリクスズキなんですが、実は外来種です。
外来種としてのタイリクスズキ
タイリクスズキは1980年代に養殖用として中国から持ち込まれました。マルスズキと比較して、水温が低下しても成長し続けるというメリットからです。
例えばマルスズキやヒラスズキは水温が20℃を下回ると活性が低下して成長が止まってしまいますが、タイリクスズキは水温が15℃になるまで成長を続けます。結果、マルスズキと比較して約1.5倍の成長速度を保つ事ができますので、養殖に適している魚種という事ができます。
つまり養殖の対象として、タイリクスズキは中国から輸入されていた訳です。しかしながら、養殖は海で行われるので、台風などで生け簀が破損してしまうと、大海原へ逃げ出してしまうわけです。
現在、日本近海で見られるタイリクスズキは、このような養殖から逃げ出した個体だと考えられています。
問題の一枚
さて、ここで静岡県の浜松市肴町にあるマンホールを見て頂きましょう。
濱松驛からほど近い肴町エリアに限定のマンホールがあるという情報をキャッチしたので狩ってきた。
— みなもとむさし@奧羽越縱斷銃彈旅行 (@minamu4545) 2015年11月25日
ヒラメカレイ(どっちか判別できません)とスズキかな?
そういや、家康も鈴木の出だったね。新田系得川氏の出というのは後付け設定なので注意。 pic.twitter.com/jj8eOhIWQ5
右上のマンホールの絵柄は明らかにスズキです。
この浜松市の肴町(さかなまち)は、江戸時代に浜松城のお抱えの魚商からスタートして、やがて魚市場ができ、第二次世界大戦前までは静岡県の海産業の中心にありました。マンホールの絵柄はその時代の記憶を残すためのデザインになっています。
さてマンホールのスズキがですが、明らかな斑点があります・・・。
タイリクスズキなのでしょうか?
タイリクスズキの特徴
タイリクスズキの特徴は、先に述べたように背中に黒い斑点がある事ですが、マルスズキにも背中に斑点がある個体もいますので、一概に斑点の有無だけでは、判定できません。
両者の決定的な違いは、側線に対する斑点のある位置です。
(A)マルスズキ、(B)タイリクスズキ 引用;Kōji Yokogawa(2019)Zookeys 859 69-115
側線とは、魚には体側中心にある水流を感じる感覚器官です。マルスズキでは、斑点があるのは側線の上側だけですが、タイリクスズキでは側線の下まであります。
マンホールの判定
さて、マンホールのスズキの判定です。
上の図では側線を赤い点線で示していますが、側線の下側にも斑点がある事が分かります。
どうやらタイリクスズキのようですね
タイリクスズキが日本で確認された当初は、九州・四国に限定されてましたが、その生態域は、徐々に広がっています。静岡の浜名湖では2008年に初めて確認されました。
今後の生態系への影響がどうなるかはわからないですが、マルスズキに比べ、タイリクスズキは脂がのって美味しいという意見もありますので、皆様も機会を見て食してください。
関連記事
タイリクスズキ vol.01~03
【タイリクスズキ01】外来種か?帰ってきたのか?あつ森までも(スズキ06)
まとめ
浜松のマンホールはタイリクスズキだった
参考:
Kōji Yokogawa Morphological differences between species of the sea bass genus Lateolabrax (Teleostei, Perciformes), with particular emphasis on growth-related changes(2019)Zookeys 859 69-115
https://matsusaku.hatenablog.com/entry/20050902/1125657306
https://fish-exp.pref.shizuoka.jp/hamanako/6_pro/pdf_hamana/hamana522.pdf