【津本式】下処理がブランド魚を生み出す・究極の血抜き(スズキ03)
スズキの代名詞と言えば「出世魚」という肩書だと思います。
地方によって呼び名はありますが、25cmくらいのものをセイゴ、40cm前後のものをハネ(フッコ)、60cm以上のものをスズキと呼ばれます。
オタマジャクシとカエルの関係や、アマゴとサツキマスの関係であれば、名前が異なるのはわかるのですが、スズキは成長に伴って形態を変えるような魚ではありません。
ではなぜ、名前を変える必要があったのでしょうか?
出世魚という概念を作った魚屋さん
名前が変わる理由は、魚屋さんが取引のためにつけた名前だと言われています。実際、スズキは体長によって身の硬さや脂の乗りが異なりますので、魚屋さんにとって、商売上、必要な呼び方だったという事です。
今回の記事では、その魚屋さんにフォーカスしたと思います。
皆様は、最近、話題になっている魚屋さんをご存じでしょうか?
魚屋さんの個人名がなかなか話題に上がる事はないのですが、宮崎県に長谷川水産の津本光弘さんはちょっと違います。
津本さんは、魚の鮮度を保つための独特な下処理を開発されて、釣り人や料理人から非常に注目されている魚屋さんです。
津本式・究極の血抜き
ではまず、「津本式」を見ていただきたいと思います。
YouTubeの現在までのチャンネル登録者は16万人、シリーズは200もある大人気のシリーズとなっています(2020年5月時点)。下記リンクはスズキバージョンです。
https://www.youtube.com/watch?v=uzQkl0LCNjs
https://www.youtube.com/watch?v=Z2CajR3pZAU
これまで、「神経抜き」という方法は聞いた事がありますが、エラから水を入れて動脈の水を抜き出す「究極の血抜き」という方法はかなり独特です。
このような手法はどうやって開発されたのでしょうか?
開発の経緯
下にはスズキの断面図を示しています。
背骨の下側に動脈があるので、原理的には、そこから血液が抜けていると理解できるのですが、それでも頭で考えられるほど簡単ではありません。
朝日新聞のインタビューによりますと、実は偶然の発見だという事を告白されています。2016年にヒラメを下処理していた際に、エラをホースで洗っていると、尾の断面から血が噴き出している事に気づいたという事でした。
これによって既に死んだ魚からも、血を抜く事ができるというのですから、革命的な発見です。
現在の津本式
現在、津本さんは「津本式」の技術者を育てるために、公認試験を行っています。対象は主に料理人という事らしいですが、津本式のファンの方も公認試験に参加されているとの事です。
この公式試験で認定されると、「津本式の魚を食べる事ができるお店」として対外的に「津本式」というブランドを使用できるようになります。
一昔前までは、魚のブランドと言えば産地で決まっていましたが、現在はそれが下処理の部分にまで進んでいるという事です。
魚をブランド化する下処理
活〆は英語でikejimeとして表記され、急所突きはIke-spikeとして海外で売られています。
このIkejimeと言う言葉は、海外に魚をブランド展開する際に使われ始めました。
それが徐々に浸透して、今ではフランス人漁師が漁船上でIke-spikeで魚を活〆して、地元のレストランに倍の値段で卸しているとの事です。つまり、活〆自体が海外でブランドを確立しているという事ですね。
そういう意味では津本式も、そのうち英名が付いて、メニューにSea bass with Tsumoto methodと記載される日も遠くないかもしれません。
魚好きの日本人らしい、日本が誇る技術だと思いました。
追伸
ちなみに出世魚は英語でShusseuoで日本語のままですが、
神経抜きはSCD(Spinal cord destruction、脊髄破壊)と言うプロレスの技のような表記がされています。
本の紹介
津本式 究極の血抜き
参考
https://tsumotoshiki.com/?page_id=2
https://www.asahi.com/articles/ASN3D6X4TN39TNAB00P.html
https://plus.luremaga.jp/_ct/17339362
https://en.wikipedia.org/wiki/Ikejime
http://www.discovernikkei.org/ja/journal/2019/5/15/seiichi-yokota/