【ボーリング】大切なのは手首の使い方(本日のYouTube・ヒカル)
時に「もしかして、そうなんじゃない…?」という仮説は、人をウキウキさせます。
そして、本日は「ウキウキ」してボーリングに行きたくなる「手首」の話です。
人気YouTuberヒカルの動画(20200729)
先日、YouTubeでボーリングの動画を見ました
ヒカルと3人の仲間たち(ロケマサ・相馬さん・名人)が2対2に分かれてボーリング対決をするというものでした。
ヒカルを含めて、ロケマサ・相馬さんはあまり上手くはないですが、ピンク色の髪をした「名人」だけは例外的に上手く、ハイスコアが250というぐらいの強者です。
【ストライク連発】ネクステでボウリング対決したらハイスコア250の名人が無双したww
名人1人だけがあまりにも上手いので、自然と他の3人との投球フォームと比較して見ていると、私のような素人でも分かる明確な違いがあることに気づきました。
それは手首です。
上手い人はテイクバック時に手首がかえっていない
テイクバックは、「構え」の状態(ボールが体の前にある状態)から、一度ボールを後ろに持っていく動作の事です。そしてこの時がボールの重さを一番感じるときです。
動画を見て頂くと気づくのですが、下手な3人は、ボールの重さに負けて、手首を返して(ボールを指だけで持って)います。一方、名人はボールを下から支えるように持ち、テイクバック時もそれを保っていました。
今までの記憶を辿ってみますと、プロボーラーなどのボーリングの上手い人は、すべて手首が返っていなかった気がします。
本当に大切な事のように思えますので、その手首の違いによって何が変わってくるのかを考えてみましょう。
手首を返すデメリット
- 指先だけでボールを持つ;考えてみれば当然ですが、手首を完全に返してしまうと、指先だけでボールを持たなければいけません。5㎏もあるボーリングの玉を力んだ指先だけでコントロールできるわけもありません。
- 手首がブレると方向もブレる; テイクバック時に手首を完全に返してしまうと、投げる際には手首を前方向に返さないといけないので、手首運動だけで左右方向へのブレが生じてしまいます。
手首を返さないメリット
- 大きな筋肉で投げる事ができる;指先や手首のような小さな筋肉ではなく、大きな腕の筋肉で投げる事ができますので、リラックスして投げる事ができ、方向もブレません。重たいボールに振り回される事もないので、フォームが安定します。
- カーブを投げる事ができる(おそらく)
理論的に手首を返さないだけで、フォームが安定して、方向もブレない投球ができそうです。真偽を確認するために以下を調べてみました。
保護具の目的
「ボーリングが上手くなりたければ手首は固定」という仮説の真偽を検証するために、よくプロボーラーが手首につけている保護具(下)に関して、調べました。
正式にはボウリングリスタイ、リストタイと呼ぶらしいです。
このボウリングリスタイですが手首の後方に金属製の板が入っていて、テイクバックからリリースする際に手首が返らないようにするために作られた道具でした。
強制的に手首を固定してしまえば、正しいフォームで投げられるという訳なので、やはり、ボーリングの上達には、手首の固定が重要だという事です。
「じゃあ、今度ボーリング行くときに買っていこう」とは、なかなかなりませんが、次回のボーリングでは手首を固定するイメージを忘れずに行きましょう。
まとめ
- ボーリングの上手い人と下手な人を比べてみると違いが見えてくる
- 手首を返さない事が大切
- 名人は上手い
参考文献
ボウリングが上達する練習方法
【結局、ウナギの値段は下がったのか】シラスウナギ漁の好調から数か月(2020年)
7月に入りまして、土用の丑の日が近づいてまいりました。
2020年は土用の丑の日が2回ありまして、7月21日(火)と8月2日(日)ですから、このあたりでウナギを食べに出かける方も多いのではないでしょうか。
ウナギか食卓に上るまで
我々が食べている大半のウナギは、シラスウナギという数センチのウナギの子供を河口で捕まえて、それを養殖したものです。
シラスウナギ漁の様子は下の写真をご覧ください。毎年、冬になりますと川面にライトを照らして、シラスウナギを一匹ずつ網で掬い上げる漁が行われます。
ここで捕れた約5cm程度(約0.2g)のシラスウナギは、養殖池を持つ養鰻場(ようまんじょう)に移され、そこで6か月から1年をかけて成魚(200~300g)になり、出荷されます。
(左)シラスウナギと(右)養鰻場 引用 日本養鰻漁業協同組合連合会HP
つまり、冬に捕れたシラスウナギは夏の土用の丑の日には市場に出回り、鰻屋さんで我々が食べる事ができる訳です。
だからこそ、シラスウナギがたくさん捕れるかどうかで、皆が一喜一憂するのです。
2020年はシラスウナギ漁が好調
このシラスウナギは良く捕れる年と捕れない年があるために、毎年のようにニュースになりますが、そのほとんどは「捕れない」という悲しいニュースです。
しかしながら2020年はいい意味で裏切られました。
4月に、シラスウナギ漁が好調なために、養殖池が一杯になりそうだという事で、シラスウナギ漁を打ち切るというニュースが流れています。漁獲量としては2019年の5倍ですから、本当に好調だったという事です。(注:2020年の漁期は、2019年冬から2020年春にかけて)
シラスウナギの取引価格も低下
更に2020年7月2日には、水産庁が2020年漁期のシラスウナギの平均価格を発表しました。キロ144万円で前年比34%安だったという事です。
ウナギ稚魚3割安、144万円/水産庁
取引価格が34%安ですから、かなり安くなったという事が分かります。
しかし、我々消費者にとって大切なのは、シラスウナギの価格ではなく、成魚(ウナギ)の価格ですので、大切なのは、その価格降下のメリットを享受できるかどうかです。
それでは、今年のウナギ(うな重)の価格はどうなるのでしょうか?
期待される成魚(ウナギ)の価格低下
先に記載したように、ウナギの養殖期間は最短で6か月ですから、土用の丑の日に出荷されているウナギは、その前の冬に捕れたものです。
つまり、漁が好調だった2020年漁期のウナギが出荷されるという事になりますので、価格が下がる事が期待されています。
それでは、ウナギの価格の実際の変動を見てみましょう。
実際の価格変化は?
2016年以降の5年間で比べてみましょう。
まず、5年間のシラスウナギの漁獲量です。
2018年、2019年は漁獲量が低く、2016年、2017年、2020年は比較的高くなっています。
そして、下のグラフは、その期間中のウナギの卸売価格の変動を示しています。
ウナギの卸売価格、 東京都中央卸売市場データをグラフ化
グラフを見て頂くと、明らかに価格の高い年と低い年がある事が分かります。先のシラスウナギの漁獲量で少なかった2018年と2019年は価格が高く、逆にシラスウナギが好調だった2016年と2017年は価格が下がっています。
さて、問題の2020年ですが、現在(2020年7月20日)のところ、6月までのデータしか公開されていないので、グラフも6月までしかありませんが、あまり変化が無いように思われます。
つまり、うな重の価格も下がる可能性は低いという事です。
まだ予断はできませんが、今後も卸売り価格を更新していきますので、少々お待ちください(7月の価格統計は8月下旬に発表されます)。
値段に関係なく、今年は二回土用の丑の日があるので、私もどちらかの日にウナギを食べたいと思っています。ちょっとしたイベント感があるので、楽しみにしています。
それでは、最後になぜ2020年は2回も土用の丑の日があるのかを見ていきたいと思います。
2020年、土用の丑の日が2回ある理由
土用の丑の日を理解するためには「土用」と「丑の日」を理解する必要があります。
土用(どよう)とは
これは中国の古代思想である五行思想(世界を木・火・土・金・水で説明する思想)に由来し、この土用の期間中は、土(つち)の気が盛んになるために、土木工事等を始めるのに適していない期間とされています。
丑の日(うしのひ)とは
365日を十二支に振り分けた結果、丑に振り分けられた日を言います。当然のように12日ごとに現れます。
土用の丑の日とは
土用期間中の丑の日を言います。
カレンダー見て頂ければ、7月21日、8月2日が土用期間中の丑の日であるという事が分かって頂けると思います
このように2回ある年は、初めの丑の日を「一の丑」と言い、次の丑の日を「二の丑」と呼びます。
補足説明
先に説明しましたように立春・立夏・立秋・立冬の前約18日間が土用の期間ですから、実は2020年は土用の丑の日が7日間ある事になります。
冬:1月23日
春:4月16日、4月28日
夏:7月21日、8月2日
秋:10月25日、11月6日
一般的にウナギを食べるのは夏だけですが、どうしても食べたい時には、自分やご家族に対する言い訳に、これを使えるかもしれませんね。
関連記事
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ウナギの稚魚(シラスウナギ)漁好調で今期終了【2020年ニュース】
ウナギの完全養殖はどうなったのか?
ウナギとサケの進化の比較
本の紹介
「サカナとヤクザ」 鈴木智彦さんの密漁ビジネスの潜入ルポです。ウナギの密漁だけでなく、アワビやナマコの問題も記載されています。
「世界で一番詳しいウナギの話」 ウナギの権威、元東京大学・塚本先生の著書です。先生は世界で初めてウナギの卵を見つけた方でもあり、ウナギの未来を最も考えている方です。
まとめ
・ウナギの価格が下がるのはもうちょっと時間がかかるのかもしれない
・今年は土用の丑の日が2回ありますので、どちらかではウナギを楽しみたいですね
参照
日本養鰻魚業協同共同組合連合会
http://www.wbs.ne.jp/bt/nichimanren/abtunagi.html
シラスウナギの価格
https://www.suikei.co.jp/ウナギ稚魚%ef%bc%93割安、%ef%bc%91%ef%bc%94%ef%bc%94万円%ef%bc%8f水産庁/
二ホンウナギ稚魚国内採捕量の推移
https://www.jfa.maff.go.jp/j/saibai/unagi.html
ウナギの価格:東京都中央卸売市場 市場統計情報(月報・年報)
http://www.shijou-tokei.metro.tokyo.jp/asp/smenu2.aspx?gyoshucd=2&smode=10
【ファミリーフィッシングならキス釣り】キスだと言えない子供の心理(キス01)
釣りメーカーSHIMANOの魚拓カレンダーですが、2020年7月の魚はキスです。下の魚拓のような30cmを超えるキスは尺ギスと呼ばれ、釣り人の憧れです(一尺は30.3cm)。
引用 SHIMANOフィッシングカレンダー7月「鱚」
キスは漢字では「き」の発音をあらわす「喜」をあてて、「鱚」という漢字が江戸時代から使用されています。いかにも上品な「キス」らしい良い漢字だと思いますが、その一方で「鼠頭魚」いう漢字で表記されることもあります。キスの頭部がネズミに似ているからだと言われています。
夏の定番・キス釣り
キス釣りと言えば、砂浜や堤防から手軽に釣れるターゲットであり、その食味からも人気のある釣りの一つだと言えます。私も幼少期には、父親に「今日はキス釣りに行くか?」と言われれば、喜んで釣りに出かけました。
今回の記事では、キス釣りにおけるファミリーフィッシングの注意点を紹介したいと思います。
家族サービスのつもりが…
さて、ファミリーフィッシングに行くとなると、子供は大喜びですが、問題はズバリ「釣れるか釣れないか」です。
しかしながら、ご存じの通り、魚は簡単に釣れるモノではありません。
いくらお父さんが頑張っても、子供にとって魚の釣れない釣りは、もはや修行になるのです。特にサビキ釣りの家族を見ると、大半の子供はスマホでゲームをして、頑張って手返しをしているのはお父さんだけという状態に陥りがちです。
サビキ釣りよりもキス釣りの方が面白い
その点、キス釣りは、基本的に投げ釣りですので、投げ釣りの楽しみがあります。
つまり、10号の錘を「より遠くに投げる事」や「狙った場所に投げる事」自体が楽しみになるために、子供が退屈を感じる事なく、自然に釣りに集中できます。
それでいて、時々はキスが釣れる訳ですから、子供も喜びます。
キス釣りの錘:10号のジェット天秤
また、砂浜で足元まで水に浸かっての釣りですから、海水浴的な要素も相まって、やっぱり楽しいですよね。
しかし、気を付けて下さい。キスのファミリーフィッシングは楽しいだけではありません。
ファミリーフィッシングの注意点
子供を危険にさらすポイントもありますので、下記の注意点をしっかりと留意して釣りをして下さい。
子供は敏感である
私の思い出を話したいと思います。当時、私は小学生2年生でした。
当時の私は、父親との魚釣りがとても楽しいと感じていました。釣りに連れて行ってもらうと、「なんとして父親よりも早く一匹目を釣りあげたい」という気持ちでいっぱいでした。
その日も、青イソメの餌を父親に付けてもらい、開始から手返しを意識し、広く探りました。
そして待望のファーストヒット。
キスを釣りあげました(ヤッター)。すかさず、父親が「何釣れたんや?」と広島弁で聞いてきます。
もちろん「キス」だと分かっているけど、言えない…
釣りあげた瞬間に、もちろん「キス」だと分かっています。
「キス」だと分かっているのですが、小学2年生の私は「キスが釣れた」という言葉を瞬時に発する事ができませんでした。
理由は「キス=Kiss=接吻=エロい」という図式が出来上がっていたからです。
それでも、しつこく父親は「何や?」と聞いてきます。
私は「いや、わからん…、何か...白い魚…」と言ってしまいました。
自らの邪念に嫌悪する
それから30年経ちます。
今になってみて、「キス」は「鱚」で、「Kiss」じゃないんだから、素直に「キスが釣れた」って言っても良かったんだよ…と思います。
しかしながら、30年経った今でも、これは「苦い経験」として、私の記憶の隅に残っています。自らの邪念に嫌悪してしまっている訳です。
子供って敏感なんですね。特に親の前では…。
大人にとっては小さい事でも、気を付けないといけないと思います。
そして、その他にも気を付けねばならい事もありますので、紹介します。
悪意が有るのか、無いのか、大人たちの誘惑
先に紹介した私のケースでは、父親にいわゆる「いじわる」の気持ちがあったのかどうかは分かりません。しかし、故意でもそうでなくとも、こんな複雑な気持ちを抱える子供たちを、もう二度と生み出したくないと言う気持ちあります。
しかし、最近、ちょっと気になる事もあるんです。それは市販の仕掛けの名称です。
ファーストキスです…(笑)
ファーストキスです。完全にやられました・・・。
この、仕掛けを見た瞬間に私は先述のすべての事がフラッシュバックしました。大人たちの「kiss」への誘惑は本当に「ズルい」と思います。
しかも、結構硬派な仕掛けにその名前を使っているので、そのバランス感覚が非常に「ズルい」です。Gamakatsu社でこの名称を決めた人にインタビューをしたいくらいです(笑)。
このように大人が気が付かないところにも、ちょっとした落とし穴がありますので、皆さんも気を付けて、ファミリーフィッシングを楽しんでいただければと思います。
その他の子供たちへの危険
もちろん子供たちへの危険は「キス=kiss」のような、心の傷だけではありません。
釣りの時にはお父さんが気を付ける点はいくつもありますので経験から紹介します。
青イソメ(ゴカイ)は噛む
ケガにつながる事はないですが、噛まれて以降、子供が青イソメを触る事ができなくなりますので、お父さんが餌付けをしたほうが無難です。
フグは噛む
クサフグは外道として良く釣れる魚ですが、意外に歯が鋭いです。出血する可能性もありますので、釣れた際には、お父さんが取ってあげてください。
毒魚
当たり前ですが、「ハオコゼ」「ゴンズイ」等の毒魚が釣れる可能性もあります。お父さんは自分の釣りに集中する事がないように。
キープディスタンス
距離をとるという概念は、子供にはないので特に気を付けてください。仕掛けを投げる際の錘はかなりの加速度がつきます。
熱中症と日焼け
砂浜は日光からの逃げ場がないので、大人の感覚で釣りをするのはやめましょう。
追伸
がまかつ(Gamakatsu) シングルフック ザ・ボックス ファーストキス 7号 100本 茶
- 発売日: 2013/07/15
- メディア: スポーツ用品
まとめ
絶対楽しい釣りになりますので、家族皆さんでキス釣りに出かけてください
【大野麦風・アユ】版画で見るアユの生態調査(アユ04)
版画家・大野麦風さんの作品「鮎」の紹介です。
過去にフナ・スズキの作品を紹介しましたので今回で3回目の紹介となります。今回の作品である「鮎」では、その描写されたアユから、縄張りを作るアユの生態を見てみたいと思います。
引用:大野麦風(1937)《大日本魚類画集・鮎》
版画家・大野麦風
明治生まれの大野麦風さんは昭和13年、日本で最初の魚類生態画集として、全72点の「大日本魚類画集」を木版画で出版しました。
「大日本魚類画集」は、単に魚が羅列されている図鑑とは異なり、生きているような魚の描写と魚類学者の解説がセットになっている生態図鑑となっています。
それでは、その描写を細かく見ていきましょう。
アユの描写1
大野麦風(1937)《大日本魚類画集・鮎》の拡大図:アユの確認行動
版画の中のアユは、互いの体をすり合わせるように並泳しています。これはどのような状態なのでしょうか?
縄張りからの追い出し行動
アユは餌場の確保をするために縄張りを形成します。そして、他のアユがその縄張りが侵入してくると、「追い出し行動」が見られます。
この時のアユは侵入アユの後ろ側から追随して、侵入者の尾びれや排泄腔をねらって攻撃をします。
左)尾びれと排泄腔 右)侵入アユへの攻撃 引用; Yumi Tanaka et al (2011) Journal of Theoretical Biology
この行動はアユの生態の中で有名なモノですが、大野さんの版画では、アユが並泳していますので、いわいる「追い出し行動」と呼ばれるものではないと思われます。それでは、その他にどのような可能性があるのでしょうか?
境界線の確認行動
先述のように鮎は縄張りを確保しています。その縄張りは、他の個体の縄張りと隣接した状態で成立しており、境界線が存在しています。その境界線上では、アユがお互いの縄張りを確認する行動が見られます。
左)アユの縄張り 右)縄張りの確認行動 引用; Yumi Tanaka et al (2011) Journal of Theoretical Biology
図のように縄張りを持つ鮎は、お互いに体をすり合わせるように縄張りの境界線を確認します。これは、大野さんの版画のアユと合致しています。
つまり版画のアユは縄張りの境界線を確認しているアユではないかと考えられます。
アユの描写2・浮石
次に版画の左下にある石を見てみましょう。
大野麦風(1937)《大日本魚類画集・鮎》の拡大図:浮石
先述したようにアユは餌場の確保のために縄張りを作ります。アユの世界にも、一等地とそれ以外の土地が川の中にあるようで、最も人気があるのは、浮石と呼ばれる砂に埋もれていない大きな石の周辺になります。
浮石は流れの速い「瀬」と呼ばれる部分にある事が多く、版画の場面はその一等地の「瀬」である事が推測されます。
アユの描写3・アユの密度
大野麦風(1937)《大日本魚類画集・鮎》の拡大図:アユの密度
アユには個体の密度によって3種類の状態があると言われています。
密度ごとのアユの状態を見てみましょう。
- 低:早いもの勝ちで「縄張りアユ」による餌場の縄張り化が進む
- 中:縄張りを作る事ができなかった個体が「あぶれアユ」となり、縄張りへの侵入を繰り返す
- 高:「群れアユ」と呼ばれる群れで生活するアユが出現します。群れアユが増えると縄張りアユは、縄張りを守るための労力を放棄して、自ら縄張りをあきらめ、自らも群れアユとなります
参考Yuki Katsumata et al. (2017) Scientific Reports vol. 716777を改変
「群れアユ」が出現する密度は、1m2あたり4.1~5.5匹以上である事が観察や実験から明らかになっています。アユの大きさは大きくとも30cm程度なので、版画内のアユは5匹/ m2を超えており、群れアユへの移行期である事が推測されます。
描かれたアユの生態
では、ここでもう一度、版画を見てみましょう。
大野麦風(1937)《大日本魚類画集・鮎》
つまり大野麦風さんが描いたアユは
- 流れの速い「瀬」で浮石があるようなアユが最も好む場所で
- 縄張りを持つアユたちが境界線を確認しながらも
- アユの密度が増してきて、全体が群れアユ化する手前
であるという事が分かると思います。
単にアユを描くだけでなく、この生態をうかがわせる表現こそが、大野麦風さんの大日本魚類画集の魅力の一つだと思います。皆様も機会を見つけ鑑賞してみてください。
関連記事
友釣りはいつがベストか?
【友釣りのタイミング・いつがベストか?】アユの生態から考える(アユ02
大野麦風フナ
大野麦風スズキ
参考
アユの密度と縄張り活動に関する論文
Yumi Tanaka et al. Historical effect in the territoriality of ayu fish. Journal of Theoretical Biology (2011) vol.268, 1, 98-104
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0022519310005230?via%3Dihub
Yuki Katsumata et al., Territory holders ant non-territory holders in Ayu fish. Scientific Reports (2017) vol. 716777. doi.org/10.1038/s41598-017-16859-4
【カワウ】アユの天敵は制御不能の鳥類・カワウ(アユ03)
アユの天敵と言えば、ブラックバスやスズキが挙げられる事がありますが、なんと言っても最大の敵は「カワウ」です。
この記事では、アユの天敵としての「カワウ」にフォーカスして行きたいと思います。
カワウとは
カワウは体長約80㎝のウ科に分類される鳥類です。漢字では河鵜(川鵜)と書き、主に川に生息している鵜(う)である事に由来しています(ただし、実際のカワウは河川だけでなく、河口や沿岸域にも住んでいます)。
水中に潜る能力に長けており、魚類を採食します。鵜飼いに使われているウミウ(海鵜)は、近縁種の鳥で、細かい違いはあるのですが、見た目はほとんど同じですので、パッと見で判断する事はほとんど不可能です。
左)カワウ、右)ウミウ 引用 Wikipedia commons
増殖し続けるカワウ
日本全域に広く生息するカワウですが、1970年代には日本全体で3000羽以下という時代がありました。この減少の原因は、高度成長期に伴う水質汚濁や内湾の埋め立てが原因だと考えられています。
その後、社会的な環境意識の向上によって、河川水質が改善された事で、カワウの餌となる魚が増え、1990年代以降になると飛躍的に増加しました。現在では15万羽以上のカワウが日本に住んでいると推測されています。
カワウはどのくらいのアユを食べているのか
さて、そのカワウですが、どのくらいのアユを食べているかという調査が山梨県水産技術センターで行われています。
2002~2008年にかけての山梨県内で捕獲されたカワウの胃の内容物の調査です(井口恵一朗2008年、坪井潤一2010年報告)。
その報告によりますと、カワウの餌で多かったのは、ニジマス26%、アユ24%で、上位2魚種ともに放流によって維持されている魚種で、半分を占められていました。
カワウの食費は?
さらにこの調査が面白いのは、なんとカワウの食費を計算しているところです。
カワウは、一日に500g程度の食事をしますので、それと、カワウの数・アユの摂食量・期間から食費を計算しています。見てみましょう。
参考 坪井潤一(2010)を改変
全体で1.8トンという途方もないアユを食べています。
上図は2008年の山梨県のデータをもとにされていますので、現在はカワウの量も増えてさらに被害が大きくなっているかもしれません。
しかし、山梨県の1.5か月間だけで、600万円を超える被害がでているのはちょっと驚きです。
当然、被害は放流個体だけではない
アユの放流後は、当然、川の中でのアユの密度が一時的に上がります。そのため放流後のアユはカワウの絶好のターゲットになってしまいます。そして、当然、野生のアユにもその被害は及びます。
特に春先の遡上時期には、アユが群れになって川を上っていきますから、この時期には河川の堰にカワウが陣取っている姿がよく見られます。
河川の堰に陣取るカワウ
そして、パクリです。
多摩川で稚アユの遡上がピークを迎えています。東京都水道局調布取水堰では、上流を目指してジャンプするアユを次々と捕らえるカワウの姿が見られました。
— 毎日新聞写真部 (@mainichiphoto) 2019年5月13日
写真特集は→https://t.co/xmvJYi20qy pic.twitter.com/13OJLG9quY
もう一丁。
今度は稚アユの群れです。
https://t.co/vRQmSu3zoF#多摩川 の #調布取水堰 で #アユ の遡上とそれを狙う #カワウ を撮影しました。18日夕刊1面(東京本社発行)に掲載しています。アユの気持ちでカワウを見ていると、まるで #ゴジラ のようです。#鮎遡上 #鮎 pic.twitter.com/D586jbmN6S
— 西畑志朗 Shiro Nishihata📷 (@NSHT_46) 2017年5月18日
数日をかけて遡上してきた稚鮎をいとも簡単に食べてしまいます。本当に悲しくなってしまいます。何とも憎らしい気持ちと、それが自然であるという達観した気持ちが入り交じり、何とも言えない状況です。
この状況が「良い」という感覚はもちろんないですが、この先、カワウとの関係は一体どうなってしまうのでしょうか?
カワウとの共生は可能なのか?
カワウは現在、完全に害鳥として認識されるようになりました。同じ魚類をターゲットとしているミサゴに比べ、水の中に潜る能力が高い分、たくさんの餌をとる能力がある事と、繁殖能力が高い事が原因だと思われます。
また、各河川では、アユやアマゴの放流が行われていますので、カワウにとって容易に餌が取れる環境が整っていると考えられます。
つまり、何か対策をとらなければならない状況になっていますので、現在は共生どころの話ではありません。
実は1990年代からカワウ対策は始まっている
カワウの問題は、今に始まった事ではなく、実は1990年代には認識されています。
実際に滋賀県では、1990年代に全個体数の50‐80%のカワウを銃器で駆除してきましたが、2001年までに個体数は減るどころか、4倍にまで増加してしまいました。この増加率は、駆除をしていない愛知県や東京都とほぼ同じでした。
短期的に考えると、狩猟による駆除や卵の撤去などが有効的な手法だと考えられます。しかしながら現在では、駆除のためにカワウをいくら獲ったとしても、その数はコントロールできないと考えられています。
つまり制御不能な状態なんです。
この状態から抜け出すためには、カワウと水産資源のバランスがどこで取れるかという長期的な仮説を立てて、それを一つ一つ検証していく事が大切だと考えられます。
すぐに結果が出ないので試行錯誤を覚悟で、彼らと付き合っていく必要があるという事です。
関連記事
アユの放流事業
【遊漁券の値段は高いか安いか】ついに来たアユ解禁日(アユ01)
ミサゴ
まとめ
・カワウはアユの天敵
・アユの放流事業にとっても大きな打撃を与えている
・駆除では、カワウの個体数をコントロールできない
・カワウとの共生は、長期的な仮説と、長期的な検証が必要
参考
井口恵一朗 放流アユ種苗を食害するカワウの摂餌特性(2018)水産増殖 (Aquaculture Sci.) 56 (3) 415-422
https://www.jstage.jst.go.jp/article/aquaculturesci/56/3/56_415/_pdf
全国内水面漁業協同組合連合会山梨県水産技術センター 坪井潤一 Let’sカワウ対策
http://www.naisuimen.or.jp/jigyou/kawau/letskawau_A4.pdf
http://www.naisuimen.or.jp/jigyou/kawau/03-1.pdf
カワウの一般的情報
【友釣りのタイミング・いつがベストか?】アユの生態から考える(アユ02)
アユの一般的な釣り方は「友釣り」です。
これは「おとりアユ」と呼ばれるアユを仕掛けに付けて川に流し、それを攻撃してくるアユを針に引っ掛けて釣るという方法です。
アユは縄張りを形成する生態があるために、外部から入ってきたアユを排除しようと攻撃する習性があるために成立する釣り方になります。
左がおとりアユで、右が釣れたアユ
それでは、その習性から考えた場合、アユの友釣りのシーズンで何時が一番釣れるのでしょうか?
その「何時が友釣りのタイミングとしてベストか?」という疑問に答えるために、まずアユの生活史から見ていきましょう。
アユの生活史
アユの寿命は一年です。成魚は秋から冬にかけて、河口に降りて産卵をします。
そこで生まれた稚魚は流されるように海に出ていき、プランクトンを食べて成長します。その後、桜の咲くころになると、沿岸域から河口へ移動して遡上を開始します。
遡上する小鮎
この遡上時期には縄張りを形成しておらず、川が稚アユで真っ黒になるような密度で遡上する姿がニュースなどで報じられます。
そして、初夏から秋まで、アユは川底の藻類を食べて成熟します。櫛状の歯で石の藻類をこそげて食べるために、この時期の川底の石には「はみ跡」と呼ばれるアユの歯後が付くことが知られています。
石の黒い部分が「はみ跡」 引用:山本大輔(2013)豊田市矢作川研究所 月報
そして、この時期こそ、餌場を確保するためにアユが縄張りを形成して、侵入してくるアユを攻撃するために友釣りの対象になる時期になります。
この期間を終えますと、成熟後のアユは再び河口に降りて、産卵を行い、一年の寿命を終えます。
縄張り行動
さて、友釣りのキーポイントになる「アユの縄張り活動」ですが、縄張りを張るのは先述のように「餌場の確保」が目的です。
しかしながら、すべてのアユが縄張りを持って餌場を確保している訳ではありません。縄張りを持っていない、いわゆる「あぶれアユ」と呼ばれるアユもいますし、仲良く暮らす「群れアユ」などもいます。
縄張りアユ
縄張りアユは、川の中で「瀬」と呼ばれる水深が浅く、流れが速い場所で且つ、大きな石(50cm)がゴロゴロとある場所を好みます。大体1m2の縄張りを作り、川底の石に張り付いた藻類を独り占めします。早い時期に遡上した個体は、より条件の良い場所に自分の縄張りを作ります。
あぶれアユ
条件の良い場所が先行者の縄張りで占められた時に、縄張りを作れないアユとして「あぶれアユ」が現れます。水深が深く、流れの緩やかな「淵」で単独で活動し、縄張りアユの縄張りに入っては、藻類を食べるので、そこで「縄張りアユ」の追い出し行動が見られます。
つまり友釣りに使われる「おとりアユ」は自然界の「あぶれアユ」を模倣したモノだと言えます。
群れアユ
普段は「淵」と呼ばれる場所に住んでいますが、時折、縄張りアユの縄張りに集団で入って、縄張り内の藻類を食べます。縄張りアユもすべてを追い出す事ができないので、無理に追い出したりしないようになってしまいます。
一口にアユと言っても様々な生活をしている事が分かります。
それでは、この違いはどこからくるのでしょうか?
実は、川の面積に対するアユの密度に依存する事が知られています。
アユの密度
アユの縄張り活動は、アユの密度によって異なることが知られています。下の図は、密度の推移とアユの生態について示しています。どの時期がアユの友釣りに向いているか見てみましょう。
参考:Yuki Katsumata et al. (2017) Scientific Reports vol. 716777を改変
遡上後の早期(アユが少ない時)
上図のAのように、川にはアユが少ないですから、アユは自分の好きな場所(瀬のような水深が浅く流れの速い場所)に縄張りを張ります。川に対するアユの密度は低く、それぞれが縄張りを張ります。
遡上後の中期1(アユが増加している時)
中期になると、遡上の第2陣・3陣がやってきますから、密度が上昇します。そうすると縄張りを形成できなアユ(あぶれアユ)が水深が深く流れの緩やかな淵に現れます。この「あぶれアユ」が縄張りに入ってきますと「縄張りアユ」が攻撃を開始しますので、この時期が最も友釣りに適した時期となります(上図のB)。
遡上後の中期2(アユがさらに増加している時)
そして、更に密度が上がると、群れアユが現れます。群れアユが増えると縄張りアユは、縄張りを守るための労力を放棄して、自ら縄張りをあきらめ、自らも群れアユとなります(上図のC)。
このすべてが群れアユになる時の密度は、1m2あたり4.1~5.5匹以上の密度であるという事が観察や実験から算出されています。
遡上後の後期(アユが減少してきた時)
後期になると、釣り人に釣られた個体が増加する事や、成熟し川を下る個体が増えてきますので、川の面積に対してアユが減少してきます。
図の矢印で示されているように、アユが減少していく際には、上図の(B)の状態を経ることなく、元の縄張りアユのみが居る状態に戻るのが特徴です。この時のアユの密度は、1m2あたり1.5匹以下である事も分かっています。つまり、減少している時期は(B)の状態にはならないので、友釣りに向いている状態にはならないという事です。
では、いつ釣りに行くのがベストか?
ここまでを見ますと、図の中で(A)から(B)に移行した当たりが、もっとも、アユの縄張りを守る生態が強く出るという事です。
現在、多くの川では、4月頃から放流を開始して、6月に釣りが解禁になります。また自然遡上してくるアユは5月ぐらいからですので、解禁日の6月ぐらいはアユの密度が上昇しているちょうど良い時期だと思われます。
また、アユが減少している状態では、群れアユの状態から、縄張りアユの状態に一足飛びに戻ってしまいますので、友釣りには不向きだと考えられます。
どうせ友釣りに行くなら早い時期が良いですね。
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まとめ
・アユの友釣りに行くなら、解禁日の直後が良い
・理由は、解禁日の直後は、アユの個体数が増加しつつある時期で、縄張りを守ろうとする習性が強く出ているから
・その時期を超えると、アユの縄張りを守る習性が弱まるので、友釣りには向いていない状態になる
参考
http://www.yahagigawa.jp/archives/003/201508/17eadfb934809c99b482f89d71888119.pdf
アユの密度と縄張り活動に関する論文
Yumi Tanaka et al. Historical effect in the territoriality of ayu fish. Journal of Theoretical Biology (2011) vol.268, 1, 98-104
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0022519310005230?via%3Dihub
Yuki Katsumata et al., Territory holders ant non-territory holders in Ayu fish. Scientific Reports (2017) vol. 716777. doi.org/10.1038/s41598-017-16859-4
【遊漁券の値段は高いか安いか】ついに来たアユ解禁日(アユ01)
6月のフィッシングメーカーSHIMANOさんの魚拓カレンダーは、季節の魚・アユです。魚拓のような30cmを超える尺鮎は釣り人のあこがれです。第二背びれである「アブラビレ」に軟乗(骨)がないのが、はっきりと分かる素晴らしい魚拓です。
引用:SHIMANO魚拓カレンダー6月
私が住んでいる四国では川による違いはあるものの6月から7月にかけて、アユ釣りが解禁されます。海で行う釣りとは異なり、釣りをするためには有料の遊漁券が全国的に必要になります。
遊漁券とは
河川を管理する漁協(都道府県知事の認可団体)が発行している釣りの許可証で、一般的には遊漁券と言われています。釣具屋さんや個人商店、コンビニ、スマホで購入する事ができ、一日券なら大体2,000円程度、年券(シーズン券)なら10,000円程度です。
本日より遊漁券販売開始です。
— 蕾-つぼみ-おとり店 (@tsubomi1110) 2019年2月1日
アユ券のみまたはアユ券と渓流魚券の同時購入の早期購入特典(素麺プレゼント)は3月31まで
※アマゴ渓流釣りの漁期が今年から
3月1日〜8月31日に変更になりました。
ご了承お願い致します。
■当店は郵送でも販売していますのでご連絡していだければご対応させて頂きます pic.twitter.com/Vzmg8CsGQ0
つまり、川でアユを釣るためには、この遊漁券を購入する必要がある訳ですが、管理釣り場ではないので、そんなの買う必要ないだろうと思っていると、監視員さんに検札を求められたりします。
それでは、なぜ、こんなシステムが必要なのでしょうか?
なぜ有料なのか
漁業法(昭和24年)に基づき、アユ、アマゴなどには漁業権が漁協に許可されています。つまり、漁師さんの生業の対象となっている魚をレジャー用に釣らせて頂いている訳ですので、お金を払う必要があるのです。
さらに、この漁業法では、各漁協に対し「魚がたくさんいる豊かで、きれいな河川の保全する」使命が課されています。
下は漁業法第百二十七条の抜粋です。
内水面における第五種共同漁業は、当該内水面が水産動植物の増殖に適しており、且つ、当該漁業の免許を受けた者が当該内水面において水産動植物の増殖をする場合でなければ、免許してはならない。
つまり、きれいな川の保全と魚の増殖をしなければ漁協として免許しない・はく奪をするという事なので、各漁協は放流事業や河川清掃を行う必要がありますし、その活動費用のために、遊漁券が必要なわけです。
でも一日、2000円という価格設定は高くない…?
遊漁券が必要な名目は分かりましたが、では、その値段はどうやって決まっているのでしょうか?
下は同じく漁業法第百二十九条の抜粋です。
遊漁料の額及びその納付の方法
遊漁料の額が当該漁業権に係る水産動植物の増殖及び漁場の管理に要する費用の額に比して妥当なものであること
つまり、放流事業等の費用に対して、それなりの料金設定をしてくださいという法令です。
しかしながら、我々には全体の費用が分かりませんから、遊漁券の料金が妥当かどうかは分かりません。
実は赤字になりやすいアユの放流事業
料金が妥当か否かは、その収益体制にありますから、漁協の収益体制を見てきましょう。
たくさんのアユを放流しても、川を訪れて遊漁券を買う人が少なければ当然赤字となりますので、その放流コストと収益の差を見るという事になります。
以下は、2018年に国立研究開発法人水産研究で行われた調査です。
調査によりますとアユの放流事業をしていた16組合のうち、黒字になっていたのはたった3組合いで、それ以外の13組合は赤字でした。
引用:中村智幸内水面漁協におけるアユと渓流魚の放流事業の採算性(2018)Nippon Suisan Gakkaisi 84 (4) 705‐710、坪井潤一 放流マニュアル(2018)
グラフ内の黒点が黒字の漁協で、赤点が赤字の漁協になります。
これのグラフを見ると、3つの事が分かります。
- 事業が大きくなれば赤字のリスクが増大している
- 他の渓流魚と比較しても、アユは収益の黒字化が難しい
- 黒字の3組合も、額面上の黒字と言うだけで、決して大きな利益を得ているわけではない
そのような視点で見ると、アユの放流事業は儲けが少なく、遊漁券が高めに設定されているのは当然なのかもしれません。
遊漁券の料金が妥当なのは理解でき始めましたが、この収益体制で、今後のアユ放流事業はやっていけるのでしょうか?
赤字回避マニュアル
このままの状態を放置するわけにいきませんので、2018年に同じく国立研究開発法人水産研究から赤字マニュアルが創刊されています。
それによりますと、赤字を回避には小型のアユを早期に放流する事がコツだという事でした。以下はポイントの抜粋です。
- 小型のアユはコストが安いために、多くの個体を放流できる。
- 解禁日(6月)よりも早い時期(4月)に放流すると社会性(縄張り)が増し、友釣りで釣れやすくなる。
- 天敵であるカワウの対策としては、浮石(砂に埋まっていない石)が多い領域に放流すると生存率が高まる
だから釣りに行くと小さな個体しか釣れないのか・・・と何かわかった気がしますが、鮎の放流事業はドンブリ勘定ではいかないようです。
顧客のニーズと実情は?
更に静岡県の経済産業部の放流指針では、顧客(釣り人)のニーズや実情をつかむ事が大切であると記載されています。つまりどのくらいのアユを放流すれば、黒字化かつ釣り客が満足するのかを計算する必要があるという事です。
それに拠りますと、黒字のポイントはアユ釣りの延べ人数と一人当たりの釣果から、放流個体数を算出することです。商売としては、当たり前の事ですが、アユの放流事業の黒字化は本当にシビアなラインなので、特に注意が必要になります。
更に、顧客満足度ですが、それに直結する「期待する釣果」の調査結果を下記に示します。県内、県外の釣り人が、一回の釣行で期待するアユの釣獲匹数です。
静岡県内、県外の釣り客の期待 引用;静岡県経済産業部アユの効果的な放流
一回の釣行で、平均17匹から21匹のアユを期待されていますから、それに適合するようにアユの放流量を調整して、満足度を調整する必要も出てくるわけです。
遊漁券の値段に対して、満足度が低ければ、釣り人が減少してしまいますから、さじ加減が大切だという事です。
結論(遊漁券は高いか安いか)
ここまでくると、アユの放流事業が本当にシビアな採算ラインで行き来している事が分かります。このような環境の中で関係者の方々の努力を鑑みますと、遊漁券の値段は決して高くないという感覚が生まれてきました。
ニュースで見るアユの経済効果
2018年の栃木県の那珂川のアユの経済効果です。
那珂川のアユ釣り13億円 経済効果、初めて試算 栃木県水産試験場
土曜日の下野新聞の記事に興味深い記事がありました🗞
— 悠汰 〜06.20.庚申山 (@moomin19820707) 2018年6月3日
那須や大田原方面は鮎釣りが盛んなのは知っていましたが、その鮎釣りの経済効果が13億円とは…おったまげ〜😵
仕掛けやおとりアユで大体6000円ぐらい掛かるのか💦
自分で釣って食べるのと、店で食べるのとでは全然違うよね、きっと😆 pic.twitter.com/T3YJW7Z6mB
新聞では100%ポジティブなニュースとして報道されていますが、「 経済効果」とは、いわば売り上げなので、決してそれがすべて黒字分ではないという事に注意をしてください。
記事内で示しましたグラフを考えますと黒字があったとしても非常に少ないと考えれますので、皆様も遊漁券をきちんと買って、持続可能なアユ釣りを楽しめる未来を作りましょう。
まとめ
・遊漁券はなんだか損した気分になるが、意外にも適正な価格である
・持続可能なアユ釣りのために、気前よく払ってください。
参考
漁業法
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=324AC0000000267
中村智幸 内水面漁協におけるアユと渓流魚の放流事業の採算性(2018)Nippon Suisan Gakkaisi 84 (4) 705‐710
https://www.jstage.jst.go.jp/article/suisan/84/4/84_17-00069/_pdf/-char/ja
坪井潤一 国立研究開発法人水産研究 赤字にならない放流マニュアル
https://www.jfa.maff.go.jp/j/enoki/attach/pdf/naisuimeninfo-11.pdf
静岡県経済産業部 アユの効果的な放流
https://www.pref.shizuoka.jp/sangyou/sa-130/documents/592ayu.pdf
アユ種苗の総合的な放流・活用指針
https://www.pref.shizuoka.jp/sangyou/sa-130/documents/641.pdf
栃木県・アユの経済効果ニュース
https://www.shimotsuke.co.jp/articles/-/32334